一次相転移点近傍における2相共存状態の安定性と相境界の構造
【研究分野】物性一般(含基礎論)
【研究キーワード】
高分子ゲル / 相転移 / 相平衡 / 光散乱 / 相分離 / ゲル水 / 粘弾性 / コヒーレント固体 / ゲル / 体積相転移 / 分域構造 / 高分子物理学 / 相境界 / パターン形成 / 2相共存領域
【研究成果の概要】
実験の面では、3相共存状態における分域の挙動の精密測定、及び混合溶媒中でのゲル内部に形成されるセルパターンの測定を、また理論的研究の面では、転移に伴う水の状態の変化と収縮相の安定化条件を解析した。
(1)実験的研究:3相共存状態の実験と分域の温度挙動
試料の大きさを従来の実験の場合に比べて約1/10の100mμとすることにより、体積緩和時間は約1/100に短縮され、分域壁の温度挙動の実験が短時間必要性から、温度制御は従来よりも難しくなった。試料ホルダーの構造、温度制御機器の精密化によってこの問題に対処し、一応初期の目標を達し得た。NIPAゲルの体積相転移機構の理解には、従来の現象論よりも更に進んだ理論を必要とすることが確認できた。
(2)相分離におけるセルパターンの観測
エタノールと水との混合溶媒中の相分離において、きわめて特徴的なセルパターンが初めて観測された。この事は、NIPA鎖がかなり剛直である事の証拠であると解釈された。
(3)理論的研究:転移におけるゲル水の振舞いと収縮相の安定性
今年度の研究から得られた最大の収穫は、現実に起こるゲルの体積相転移が、従来Floryの現象論が予言する相転移とはかなり異なると言う点が明らかになったことである。すなわち、種々の実験事実を総合的に判断すると、収縮相は自由水を含まず、網目と束縛水とが結晶的な構造を形成していると考えられる。この事は、一種類のモノマーから出来た合成高分子でも、溶媒を組み込んだ高次構造を取り得ることを示すものであり、タンパク質のような生体高分子の構造形成のモデル系としても、ゲルが有効であることを示す。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山本 達之 | 東京工業大学 | 生命理工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1993 - 1994
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)