シングルショット超強磁場X線計測によるスピン格子結合の解明
【研究キーワード】
強磁場 / 自由電子レーザー / シングルショット / X線 / XFEL / X線回折 / X線分光
【研究成果の概要】
X線は物質の構造や電子状態を微視的に明らかにする優れたプローブであり、磁場中で起こる様々な量子現象を理解するために、強磁場環境下でのX線実験技術 の開発は興味深く重要である。世界的に放射光X線とパルス強磁場を組み合わせて40テスラの実験が可能となっているが、現状の技術の延長では磁場の上限は50 テスラ程度にとどまる。マイクロ秒の超高速磁場を用いれば100テスラ以上の超強磁場X線実験が可能となるが、X線の光源もシングルショットで十分な強度を有する自由電子レーザー(XFEL)を用いることが必須となる。本年度、パルス超強磁場発生可能となるシステムを構築し、実際にその装置を用いたXFEL実験を兵庫県の自由電子レーザー施設SACLAにて2021年5月25~28日(課題番号2021A8063)および、2022年2月22~25日(課題番号2021B8064)で行った。最大77テスラの磁場を安全に発生し、実際にその下でX線回折計測に成功したことで、X線回折実験の世界記録を大きく上回ることができた。2021年5月の実験では、Mn酸化物BiCa0.5Mn0.5O3における磁場誘起電荷秩序融解に伴う構造相転移をX線回折でとらえ、結果はApplied Physics Letter誌に論文掲載された。BiCa0.5Mn0.5O3は、これまでに50テスラ付近で相転移が起こることが予想されていたが、実際に結晶構造の変化を確かめることはできていなかった。さらに、この物質は低温では相転移の動的挙動が緩慢になる傾向が磁化測定からわかっており、結晶格子変形との関連は今後興味深い研究テーマである。また、2022年2月には(Pr,Y)CaCoO3における磁場中X線回折実験を低温で行い、Prの価数転移とCoのスピン転移による構造相転移の観点から現在結果を解析・考察中である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
池田 暁彦 | 電気通信大学 | 大学院情報理工学研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
久保田 雄也 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 放射光科学研究センター | 基礎科学特別研究員 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)