共鳴X線回折による拡張磁気多極子秩序の研究
【研究キーワード】
X線回折 / 強相関電子系 / 拡張多極子秩序 / 強相関系 / 放射光 / 共鳴X線回折
【研究成果の概要】
狭義の多極子は一原子がもつ波動関数で表される.最近これを拡張した近接原子を含めたクラスター多極子や,軌道角運動量の異なる軌道から構成されるハイブリッド多極子などの拡張多極子が提唱されている.この背景には,マルチフェロイック物質に代表される交差相関による電気磁気応答,輸送現象,励起構造などの非自明な物理現象を統一的に理解しようと試みがある.このような交差相関においては、局所的な空間反転対称性と時間反転対称性の破れを表す奇パリティ拡張多極子の働きを理解することが重要である.この奇パリティ拡張多極子は,その掌性による符号があり,ドメインを形成する.
共鳴X線回折は拡張多極子が形成するドメイン構造を可視化できる非常に有用な手段である.目的とする元素の吸収端を利用することによって拡張多極子が形成する秩序を同定し,さらにマイクロビームによる走査によってドメイン構造を観察することができる.
当該年度はアナポール秩序が存在すると考えられているCuO,TbB4などの試料においてアナポール秩序,モノポール秩序のドメイン構造の観察および制御の研究をおこなった.CuOの研究においては低温における多段階秩序のドメイン形成についての知見を得,TbB4においては,モノポール秩序のドメイン形成に関する知見を得ることができた.
装置開発では、集光レンズとして用いるゾーンプレートのピエゾ素子を用いた微少移動システムの構築、集光試験を行った。その結果,Fe L3吸収端エネルギーにおいて集光サイズ200ナノメートルが実現できていることを確認した.この集光サイズは従来のミラー集光によるマイクロビーム幅20マイクロメートルを約二桁更新している。このように空間分解能が飛躍的に向上することとなった。今後,この技術を用いてより微細なドメイン構造を観察することができると期待できる.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大浦 正樹 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 放射光科学研究センター | チームリーダー | (Kakenデータベース) |
田中 義人 | 兵庫県立大学 | 理学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
木村 剛 | 東京大学 | 大学院新領域創成科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】46,150千円 (直接経費: 35,500千円、間接経費: 10,650千円)