メゾスコピック複合系を利用した多体効果による量子状態の制御と観測の理論研究
【研究キーワード】
量子多体効果 / 局所フェルミ流体 / 量子ドット / 近藤効果 / 輸送現象 / 量子干渉効果 / 量子もつれ / メゾスコピック / 多体効果 / 量子輸送
【研究成果の概要】
極低温で量子多体効果の起こっているカーボンナノチューブで作成された量子ドットの電流特性を、実験グループと協力し明らかにした。特に量子ドットに局所フェルミ流体状態が形成されるときの、電流のバイアス電圧に対する非線形特性も注目した。その結果、磁場やドット準位の変動に対する応答中に、既存の局所フェルミ流体論を超えた、フェルミ流体補正効果の実験観測において初めて成功した。フェルミ流体補正項は3体相関の寄与によって記述されることが理論的に明らかになっていて、この実験では既存の2体までの相関で記述されるフェルミ流体を超えて、より多くの電子による相関状態の観測に成功したことを意味する。
また、2つの電極に繋がれた量子ドットのバイアス電圧の非線形までの電流応答を理論的に明らかにした。特に、2つの電極と量子ドットの結合の非対称性の電流への影響を明らかにした。非対称性として、左右のリードとドットの電子の混成と、左右の電極への電圧の印加の2つに注目し微視的理論により調べた。その結果、電流のバイアス電圧の2次の応答に準粒子相互作用によるハートリー項と、3次の応答で3体相関による効果が増幅されることがわかった。さらに、磁場応答やドットの準位の変動変動に対するケルディッシュ形式に基づいた微視的理論を構築した。その結果、ケルディッシュ形式のグリーン関数の低エネルギーで、周波数、温度、バイアス電圧の2次までの厳密な表式を導出することに成功した。これらの理論研究により、多体効果により低エネルギーで形成される量子状態が体系的に明らかになった。
また、リード電極に並列に2つの量子ドットがつながった系の多体効果と量子干渉効果による輸送特性を明らかにした。特に多体効果によって形成された散乱位相の測定のための実験と比較するため、複数のリード電極を用意し、電流測定に与える影響を明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)