チベット高原における高エネルギー粒子線天体物理の展開
【研究分野】素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
【研究キーワード】
チベット / 空気シャワー観測装置 / 太陽の影 / 高エネルギー宇宙線 / knee領域 / ガンマ線点源 / 国際共同研究 / 中国 / ガンマ線天体 / 国際研究者交流 / 活動的天体 / 宇宙線 / 粒子線天体物理
【研究成果の概要】
チベットのヤンパーチン(標高4300m)で稼動中の空気シャワー観測装置は2003年秋に完成し、現在まで順調に稼働している。装置は789台のシンチレーション検出器を7.5m間隔の碁盤目状に配置したもので、総面積は37000平方メートルである。本装置で得られるデータ量は1日約30GBである。当該研究期間内に得られた主な成果は下記の通りである。
1)10^<14>・10^<17>evの3桁に亘る広いエネルギー領域での一次宇宙線の全粒子スペクトルが求められ、4×10^<15>eVにスペクトルの折れ曲がりがあることが明確になった。
2)knee領域での一次宇宙線の陽子とヘリウムのスペクトルが初めて求められた。この結果と1)を合わせると、knee領域の一次宇宙線組成は重い原子核が主成分であるという結果が導かれる。これは宇宙線の加速モデルの構築に強い制限を与えることになる。
3)かに星雲、Mrk421などからのガンマ線スペクトルが観測された。
4)宇宙線強度の全天探査及び異方性の解析から、シグナス領域に有意な異方性を初めて見出した。いくつかの広がったガンマ線天体が存在する可能性を強く示唆している。
5)太陽の影の時間変動を解析することにより、活動期の太陽磁場について新たな知見を得た。
昨年の秋にアレイの中に面積100m^2の水チェレンコフ検出器を地下2.5mに設置し、シャワー中のミューオン数観測の予備実験を開始した。近い将来、ミューオン検出器面積を約1万平方メートルに拡張する予定である。これが完成すると数10TeV領域で世界最高感度の広視野宇宙ガンマ線観測装置になり、宇宙線の起源と加速の解明を大きく前進させることができる。
【研究代表者】