高圧キセノンガスを用いたMeV領域ガンマ線コンプトン撮像装置の開発
【研究分野】応用物理学一般
【研究キーワード】
粒子測定技術 / 放射線 / センサー / 光計測 / コンプトンカメラ
【研究成果の概要】
本研究は、次の三つの部分、高圧キセノンガス放射線物理、検出器シミュレーション及び検出器の基礎実験、に分類できる。放射線物理として、高圧キセノンガスにおけるα線による電離収量は圧力が10気圧から30気圧と増加するにつれて僅かながら減少する。また、シンチレーション収量は0.5Tdの電場以下で電場の増加に従って急激に減少し、それ以上の電場では一定の値を示す。しかし、その値はゼロ電場での約40%に等しい。さらに、シンチレーション収量は圧力が10気圧から30気圧へ増加すると僅かに増加する。また、再結合によるシンチレーションへの寄与はメタンガスを添加することにより減少し、0.2%の濃度で完全に無くなってしまうことなどが分った。
高圧キセノン中の電子温度はH_2やCH_4のような分子性ガスを少量添加すると著しく下がる。その効果は、電子群の移動速度を増加させるばかりでなく、電子群の移動中の広がり小さく保持する。例えば、10気圧のキセノンガスに0.42%の水素ガスを添加すると、電子スオームが1kV/cmの電場のもとで1cm移動すると0.5mmに広がるが、これは添加物のない場合の半分である。また、高圧キセノンガスを用いるタイムプロジェクションチェンバー(HPXe-TPC)でコンプトン効果を利用すると、約100kmの高度から月面を見た場合シミュレーションによると約10度の角度分解能が得られることが分った。この角度分解能は、γ線の到来方向が分布している場合コンプトン散乱反挑電子の飛跡が多重散乱で乱されることで、乱されて、線源が点状のときはコンプトン散乱のドップラー広がりで乱されることが分った。現在、常圧の2次元TPCでα線の飛跡測定を行なったデータから飛跡を再構成してα線放出角分布が再現できることから、MeV領域の荷電粒子の運動量の測定が開発中のTPCで可能なことが分った。
【研究代表者】