キセノンを用いた高精度放射線検出器の開発
【研究分野】素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
【研究キーワード】
液体キセノン / ガンマ線検出器 / シンチレーション / パルス管冷凍機 / 光電子増倍管 / レーザーコンプトン / PET / MEG実験 / シンチレーション光 / キセノン純化装置 / 低音用光電子増倍管 / 循環式液体キセノン純化装置
【研究成果の概要】
ここでは、数百keVから数十MeVのガンマ線のエネルギー・位置および時間をこれまでにない高い精度で測定できる、新しいタイプの液体キセノン・ガンマ線検出器の開発を行い、汎用的に使える検出器として実用化を目指した。これにより、このエネルギー領域のガンマ線を用いる基礎科学分野において画期的な進展を図るものである。そのためにこのエネルギー領域のガンマ線を完全吸収できる100リットルの検出器を製作した。キセノン温度(マイナス100度)で効率の良い冷凍機や、この低温下でキセノンの出す紫外光(波長およそ178nm)に感度の良い光電子増倍管、紫外光を吸収する少量の不純物を取り除くためのキセノンの純化装置など、検出器に必要な要素の開発を行った。その結果、低温下での安定した長期運転と、紫外領域でのシンチレーション光の測定という、実用化に伴う困難はほぼ解決することができた。ここでは、ミュー粒子稀崩壊探索実験の準備用に使った様々なインフラストラクチャを活用することで迅速にかつ安価に開発を進められた。また、電子蓄積リングでのレーザー逆コンプトン反応によるガンマ線を使って検出器のエネルギー・時間・位置分解能を測定し、その性能の高さを実証した。これらの成果により、素粒子実験用検出器のみならず、医療診断に使われるポジトロントモグラフィー(PET)への応用も目途が付いてきた。この研究成果をさらに発展させ、今後は検出器を大型化して、より高いエネルギー(数百MeVから数十GeV)のガンマ線に対しても同様の性能を持つ検出器が実現できるか検討していきたいと考えている。
【研究代表者】