原子核乾板を用いた「水」標的によるニュートリノ反応断面積の精密測定
【研究キーワード】
ニュートリノ / 原子核 / 加速器 / 反応断面積 / 原子核乾板 / 素粒子実験
【研究成果の概要】
ニュートリノ振動をより高精度に測定するために、ニュートリノと水の反応を研究している。J-PARC加速器からのニュートリノビームを使い、原子核乾板測定器を用いることで水とのニュートリノ反応を高解像度で測定した。その結果、世界の他の実験では到達できなかった200MeV/cの低運動量まで陽子を観測することに成功した。また、荷電カレント・ニュートリノ反応断面積を世界最高の精度で測定した。我々のデータを使ってニュートリノ・原子核反応モデルの再現性を確認し、データがニュートリノ・原子核反応モデルの改良に適用できることがわかった。
【研究の社会的意義】
ニュートリノは素粒子と宇宙の研究のおいて重要である。ビッグバンの後に、なぜ反物質が消滅し、物質からなる我々の宇宙が誕生したかという根源的な謎を解明する鍵に「粒子と反粒子の間の対称性(CP対称性)」がある。最近、T2K実験から、ニュートリノでCP対称性が破れている兆候が観測されており、この観測の感度向上が素粒子の研究分野で望まれている。本研究は、この探索感度の向上のために新しい実験を行い、ニュートリノと原子核(水)との反応を世界最高の精度で測定した。また、ニュートリノは不思議な素粒子として一般の国民も興味を持っており、その好奇心を刺激する結果と言える。
【研究代表者】