強相関電子系の量子臨界点近傍の磁気励起と量子分離の解明
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
強相関電子系物質 / 重い電子系物質 / 酸化物銅超伝導体 / 核磁気共鳴 / ミュオン共鳴 / 量子臨界点 / ルテニウム酸化物 / メタ磁性 / 磁気励起 / 銅酸化物高温超伝導体 / ストライプ秩序
【研究成果の概要】
研究期間に扱った問題として(1)乱れの影響を受けていない磁気量子臨界点の振る舞い、(2)ドープによって引き起こされる磁気秩序と超伝導の相分離現象を、微視的測定の核磁気共鳴、ミュオンスピン共鳴の実験から調べた。(1)については(1a)YbRh_2Si_2における磁場誘起量子臨界点近傍と、(1b)Sr_3Ru_2O_7の磁場誘起一次相転移に関係する量子臨界点の磁気励起を調べた。(2)については銅酸化物高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4における磁性と超伝導の関係について調べた。
(1a)磁気量子臨界点近傍に位置する2次元物質YbRh_2Si_2の磁気励起
YbRh_2Si_2の臨界磁場近傍の磁気相関を、μSR測定を用いて調べた。その結果臨界磁場において均一な磁気揺らぎが低温でfreezeするような描像が得られた。
(1b)Ru酸化物Sr_3Ru_2O_7の磁場誘起量子臨界点における磁気励起
Sr_3Ru_2O_7では一次相転移の臨界点が、磁場と試料のなす角θを変化させることによりT=0となった量子臨界点である。この量子臨界点に相当する磁場H_Mにおいて、酸素の核磁気共鳴の実験から、磁気励起がT=0で異常を持つ量子臨界ゆらぎの性質を持つことを明らかにした。また、Sr_3Ru_2O_7とYbRh_2Si_2の比較から一次と二次相転移によって引き起こされる量子臨界点の違いも示した。前者の場合は臨界点の上下で相に変化がないが、後者には相の違いが見られる。
(2)銅酸化物高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4における磁性と超伝導
La_<2-x>Sr_xCuO_4 (LSCO)の磁性と超伝導の臨界濃度(x=0.06)近傍のx=0.07の試料において、磁性と超伝導の関係をミュオン共鳴実験から調べた。その結果(a)磁気相と超伝導相といった相分離が見られないこと、(b)超伝導転移温度(T_c〜17K)以下T_M〜4Kで静的磁気秩序を起こすこと、(c)bulkの性質として超伝導は確認できるものの、磁気秩序状態では90%以上が内部磁場を感じていること、(d)100K以下の温度で、変調を受けた反強磁性相関が発達することを明らかにした。これらの微視的な結果と、中性子散乱実験の結果を考慮し、我々は磁性と超伝導が共存する状態としてストライプ状態を考え、ストライプ構造のミクロな構造を提案した。
【研究代表者】