テンソルネットワーク法によるフラストレート量子スピン系の新奇秩序探索
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
テンソルネットワーク / フラストレーション / 磁性体 / 相転移 / スピン液体 / スピン軌道相互作用 / キタエフ模型 / カゴメ格子 / 量子スピン
【研究成果の概要】
本研究では、二次元の量子フラストレート磁性体の基底状態を、波動関数を小さなテンソルの積で記述するテンソルネットワーク法を用いて解析した。S=1/2カゴメ格子ハイゼンベルグ量子スピン模型については、磁場中での基底状態を計算し、複数の磁化プラトーの存在を明らかにした他、1/3プラトーでは、六角形ループ上のスピンが共鳴状態を形成していることを示した。また、キタエフ相互作用が強く存在する物質、Na2IrO3について、その基底状態相図を明らかにした。さらに、強磁性と反強磁性の共存によりフラストレーションが存在する正方格子模型について、磁場中でスピンゆらぎが非常に大きくなることを明らかにした。
【研究の社会的意義】
本研究により量子フラストレート磁性体の基底状態を計算する強力な手法として、テンソルネットワーク法を確立することができた。種々のフラストレート磁性体に対して得られた結果は、実験での観測をよく説明できており、計算物理の立場からこれらの物質の理解に寄与することができた。特に、キタエフ相互作用が強い物質については、本研究を通して、キタエフスピン液体状態のテンソルネットワークを用いた理解が進み、定量的にだけでなく、定性的にも大きな進展があった。この成果は、今後のキタエフ物質の物性理解にも活かせると期待している。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2015-04-01 - 2019-03-31
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)