光散乱によるスピンパイエルス系銅酸化物の磁気励起の研究
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
ラマン散乱 / スピンパイエルス転移 / 反強磁性相転移 / スピンの揺らぎ / 磁気励起 / 折り返しフォノン / スピンギャップ / ファノ効果 / 反強磁性転移 / フォノン / 磁気比熱 / 準弾性光散乱 / CuGeO_3
【研究成果の概要】
1.CuGeO_3の準弾性光散乱
スピンのエネルギーの揺らぎから来る準弾性散乱をスピンパイエルス移転以上で観測した。その積分強度より、磁気比熱の温度変化を求め、第二最隣接交換相互作用を取り入れた一次元量子スピンモデルと比較検討した。半値幅より磁気揺らぎの相関長の温度依存性を得た。
2.ド-ピング効果-Cu_<1-x>Zn_xGeO_3、CuGe_<1-y>Si_yO_3のラマン散乱
格子の倍周期化よりラマン活性になる、折り返しフォノンを調べ、ドープ濃度を薄い範囲で増やすと、スピンパイエルス転移が抑制され、格子変位の大きさが低下する事が分かった。新たに低温で現れる反強磁性相でも、折り返しフォノンが観測でき、この相でも超格子構造が存在することを確認した。ドープした試料で、選択則の破れから、磁気ギャップモードの一次ラマン散乱を観測した。ドープ量が増えると、そのエネルギーは減少し、半値幅が増大した。2つの磁気励起よる束縛状態からの二次ラマンピークは、ドープ量を増やすと共鳴状態になり、急速に消失する。この事は、主に磁気励起の寿命が短くなるためと理解し、グリーン関数を用いて理論的に示した。
3.α′-NaV_2O_5のラマン散乱
スピンパイエルス相で3本の折り返しフォノン、磁気励起よる一次及び二次ラマン散乱を観測した。偏光特性より、スピンパイエルス相の結晶構造の対称性を予想した。Na^+イオン欠損した系での折り返しフォノンのラマン散乱より、欠損したNa^+イオンは、V^<4+>イオンからできる1次元スピン鎖を切断し、スピンパイエルス転移を抑制し、格子変位を減少させる事が分かった。また、V^<4+>イオンのd-d遷移による電子ラマンバンドとフォノンピークの相互作用によるファノ効果を観測した。Na^+イオン欠損量を増加させると、ファノ効果は弱まる。このスペクトル変化は、フォノン-フォノン相互作用による緩和過程を考慮したファノ効果のラマン散乱の理論で説明が出来る。
4.高圧下でのラマン散乱
ダイヤモンドアンビルを用いた高圧下での光散乱の準備を修了し、圧力効果の研究を始めている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
田中 秀数 | 東京工業大学 | 理学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1995 - 1996
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)