カイラル磁性体における量子効果の理論
【研究キーワード】
カイラル磁性体 / カイラルソリトン / 量子性 / ジャロシンスキー守谷相互作用 / ペロン・フロベニウスの定理 / 磁化過程 / ハルデイン問題 / 準位交差 / ソリトン / 量子トンネリング / 擬南部ゴールドストーンモード / 核生成型連続転移
【研究成果の概要】
カイラル磁性体は、平衡状態において磁気構造(磁気モーメント、スピン)が空間的にらせん構造を取る磁性体である。そのらせん構造の外部磁場に対する依存性は、ジャロシンスキーによって見出された特異な連続相転移を伴うものである。これまで古典スピン模型を用いて解析され、また実験結果と比較されてきたこの現象の量子性について本研究では厳密対角化法などの数値的手法と保存量に関する考察、解析的な近似計算によって明らかにした。2021年度の主な成果は、ジャロシンスキー守谷相互作用とゼーマンエネルギーのみから構成されるスピン鎖において、S=1/2の場合に、ソリトン数Nと最低エネルギー状態の結晶運動量kの間にk=πNの関係があることを厳密に示したことと、S=1以上(S=1,3/2,2,・・・)の量子スピン鎖系においても、ジャロシンスキー守谷相互作用とゼーマンエネルギーのみから構成されるスピン鎖をソリトン数の固有空間に射影した模型においてソリトン数Nと最低エネルギー状態の結晶運動量kの間にk=2πSNの関係があることを厳密に示したことである。年度の途中で、Sが大きい場合にスキルミオンの分散関係に対して同様な関係式を議論した先行研究[Takashima et al.2016]やナノ磁性体における磁壁の分散関係に関する先行研究Braun 2012]の存在に気付いたが、本研究は量子性の大きい、小さいSの量子スピン系に対して純粋に量子系として扱う点に半古典的手法を用いた先行研究にはない特徴と重要性がある。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)