新規ハイパーカゴメ反強磁性体の開拓と新奇物性探索
【研究キーワード】
スピンフラストレーション / ハイパーカゴメ反強磁性体 / トポケミカル反応 / 熱測定
【研究成果の概要】
本研究は,三角形が3次元的に頂点共有したハイパーカゴメ格子を有する反強磁性体の探索を目的として様々なアプローチで物質合成を試み,それによって得られた試料から新たな物性を創出しようとするものである。本年度は主に以下の4つの項目に取り組んだ。(1)ハイパーカゴメ反強磁性体Zn2Mn3O8およびCo3V2O8の中性子回折測定を行い、どちらの物質も反強磁性転移温度以下で磁気波数ベクトルk=(1/4, 1/4, 1/4)に由来する磁気ブラッグピークの観測に成功した。このことから磁気空間群はR_I32をもつことが予想されるが、正確な磁気構造の解析には現在のところ成功していないため、引き続き解析を進める。(2)イオン交換反応によるZnMgMn3O8の合成について、合成条件の最適化により不純物相の無い試料の合成に成功した。各種物性測定から、熱容量には相転移を示唆するピークが観測されるが、他の物性には何の変化も見られないことを確認した。基底状態をさらに詳しく調べるため、次年度に中性子回折実験を行う予定である。(3)ハイパーカゴメ反強磁性体候補物質Zn2Co3TeO8の合成を進めたが、どのような手法を試してもZn-Coサイト混合を20%以下に抑えることはできなかった。そこで、サイト混合がないCo5TeO8から徐々にZnをドープしていく際の物性変化を調べた結果、元々反強磁性的であった磁気相互作用がZnドープとともに強磁性的なものに変化したことから、Zn2Co3TeO8の基底状態は強磁性体となっており、フラストレーションは生じないことが予想された。(4)ハイパーカゴメ格子を有するLi2(Mg, Zn)Mn3O8からリチウム脱離を行い、電荷自由度を変調さることで新規ハイパーカゴメ反強磁性体の合成を試みた。しかし、過去の報告に反してリチウム脱離が進行せず、合成は現在のところ上手くいっていない。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)