量子ホール系における巨大熱電応答の探索
【研究キーワード】
熱電効果 / 量子ホール系 / 熱伝導率 / 2次元電子系 / 整合性磁気抵抗振動 / 3オメガ法 / モットの関係式 / ヴィーデマン・フランツ則 / 2次元電子系 / 電子温度
【研究成果の概要】
熱電応答性能を表す無次元性能指数ZTの評価に必要となる熱伝導率の測定手法開発をさらに進めた。バルク試料で用いられる熱伝導率測定法である3ω法と呼ばれる手法を量子ホール系(磁場下の2次元電子系)に応用し、ジュール加熱による温度上昇、及び熱伝導率を導出する手法を確立した。初年度は温度検出にShubnikov-de Haas振動振幅を用いていたが、本年度はホール抵抗のプラトー間での傾き等、他の抵抗現象も温度検出に使用可能であることを明らかにした。また、熱流出の抑制が期待できる、量子ホール系と直接の電気的接触を持たない表面ゲートを用い、電気容量の量子振動振幅の温度依存性から温度検出を行うための基礎データを収集した。
量子ホール系に1次元周期的ポテンシャル変調を加えた1次元平面超格子では、熱起電力テンソルおよび熱伝導率テンソルの整合性磁気振動の新たな解析的表式の導出を行い、振動の振幅、位相と変調の振幅、周期、散乱時間との関係を可視化した。初年度にホール抵抗の整合性磁気振動の振幅が従来の理論的予想よりはるかに小さいことを実験的に確立したが、このことと新たに導出した表式から、従来の理論に反して、熱起電力テンソルの対角成分(ゼーベック係数)が大きな異方性を持つこと、および2つの非対角成分(ネルンスト係数)には大きな違いがあり、温度勾配が周期の方向と直交する場合の非対角成分が、他の対角・非対角成分と比較して圧倒的に大きな振動成分を含むことを明らかにした。また熱起電力、熱伝導率に対し、それぞれMottの関係式、Wiedemann-Franz則が良い近似となるための条件を明確化した。
最も大きな熱電応答が期待出来るコルビノ型試料の設計にも着手している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)