時間結晶を用いたレーザー周波数下方変換の基礎理論
【研究キーワード】
非平衡 / 時間結晶 / 超伝導 / 光物性 / レーザー
【研究成果の概要】
昨年度に引き続き、固体中での時間結晶の実現、およびそれを用いたレーザー周波数の下方変換技術の開発に向けて解析を行なった。解析の対象としては、モット絶縁体を記述する電子系のモデルであるファリコフ・キンボール(FK)模型を扱った。この模型は、非平衡動的平均場理論の範囲で数値的に厳密に解析できることが知られている。FK模型に周期的な振動電場を加えたときのダイナミクスを計算したところ、モット絶縁体相において駆動電場とは異なる周波数で振動する電流成分が存在することがわかった。その周波数は相互作用パラメーターに一致することがわかり、振動電場の周波数には依存しない。様々な相互作用の強さや駆動電場の振幅、周波数について数値計算を行い、非整合な周波数の振動が現れる条件を調べた。
関連するテーマとして、時間に周期的な光電場によって駆動された超伝導体において、別の周波数の光を入射させた時に三次高調波が増幅する現象について解析を行なった。この現象は5次の非線形効果によって理解することができる。BCS近似に基づいて対応する5次の非線形感受率を評価し、共鳴点で最も速く発散する寄与を抜き出した。その結果、ヒッグスモードの自己相互作用や光との高次の非線形結合を通して3次高調波の強度を共鳴的に変調させることができることがわかった。その他、多バンド超伝導体に現れるレゲットモードを振動電場に関する線形応答の範囲で観測できる可能性を明らかにする研究や、量子開放系における超伝導相の集団励起モードに関する研究を行なった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)