テンソルネットワーク法の改良と古典・量子スピン系への応用
【研究キーワード】
統計物理学 / 計算物理学 / 物性基礎論 / 統計力学 / 量子スピン系 / テンソルネットワーク / トポロジカル量子状態
【研究成果の概要】
(1)テンソルネットワーク(TN)によるモデルの表現は実空間繰り込み群の手続きを行う上でも有用であることは,High-order tensor renormalization group (HOTRG) 法の成功などによって広く知られているが,最終的に臨界指数などの普遍パラメータを求めるには,2次元共形場理論(CFT)との比較から導かれる関係式を用いてきた.この従来法は3次元以上への拡張が知られていなかった.我々はスケール普遍テンソルから,繰り込み群の操作そのものを表現する超演算子を構成し,その固有値からスケーリング次元を求める方法を考案した.この方法はCFTの知見には依存していないため,原理的には3次元以上にも適用可能である.2次元イジングモデルに対するベンチマークの結果,我々の方法で精度良くスケーリング次元を求めることができることがわかり,3次元CFT研究への足がかりを与える方法が得られた.(2)これまでTN法は量子系計算において基底状態計算に利用されてきたが,励起状態計算のための手法は知られていなかった.我々はテンソルネットワーク法に基づいて,マグノンやスピノンなどの素励起のスペクトルを計算する手法を提案した.(3)はしご状の格子で定義された4体相互作用のある S=1/2 XXZ モデルについて,variational uniform matrix product state (VUMPS) の方法などを応用して,その相図を明らかにした.このモデルは脱閉じ込め転移を示すことで知られる2次元 JQ モデルの1次元版とみなすことができる.特に,我々はこのはしごモデルが磁気秩序状態から VBS 状態への連続転移を示すことを見出した.また,相図全体は,磁気秩序相,ハルデーン相,VBS相などを含む8つの異なる相からなることを明らかにした.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)