フラクタル上の確率過程についての研究
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
フラクタル / 確率過程 / 自己相似集合 / 熱核 / シェルピンスキーカーペット / ハルナック不等式 / ホモジナイゼーション / 拡散過程 / ランダムウォーク / ハウスドルク次元 / 固有値分布
【研究成果の概要】
1。本研究を遂行する中で、有限分岐的フラクタル上の確率過程についての新たな知見が得られた。P.c.f.self-similar setと呼ばれる自己相似性を持った有限分岐的フラクタルの上にレジスタンスメトリックという距離を入れたとき、この上の拡散過程の熱核(基本解)の精密な評価が一般に可能であるという結果である。これまでに、図形に強い対称性がある場合には熱核のアーロンソン型の評価が得られていたが、今回の研究により、一般にはアーロンソン型の評価は成り立たないことがわかり、さらにショーティストパスの挙動との関連が詳しく調べられた。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、J.London Math.Soc.に掲載予定である。
2。インフィニット、ラミファイド(無限分岐的)フラクタルについては、ランダムシェルピンスキーカーペットに於ける拡散過程の熱核の研究を行い、サンプルとなるカーペットごとの熱核の詳しい評価が得られ、ランダムネスに強いエルゴード性の条件が課せられる時には、この評価からさらに確率1で成り立つ評価が導かれることが分かった。図形が高次元の場合、バーロー・バス達によるカップリングの方法を用いることによりハルナック不等式を証明することが議論の一つの鍵となった。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、投稿予定である。
3。ユークリッド空間での現象とのつながり、特にホモジナイゼーションについては、楠岡氏との共同研究以来くりこみ不変な点の安定性が問題になっている。本研究の中で、海外の学会等で関連した研究を行っている研究者達と議論を行い彼等のプレプリントを読むことによりいくつかの新たな手法、視点を得ることが出来たが、それを我々の範疇に適応するには依然いくつかの技術的困難が残っている。これは今後の課題である。
【研究代表者】