フラクタルおよび関連する諸問題の研究
【研究分野】数学一般
【研究キーワード】
フラクタル / フラクタル分布 / フラクタル次元 / フラクタル領域 / 自己相似過程 / ランダム媒質中のランダム・ウォ-ク / 非弾性体衝突 / タイリング
【研究成果の概要】
本研究の目的は、近年多くの数学、物理、その他の諸科学で興味が持たれているフラクタルについて、特に数学的な観点から見直し、そこで生まれた新しい問題、新しい数学について、他の分野の問題と関連させながら研究することであった。以下、研究成果の主なものを述べる。
研究代表者の前島は河野(京大)との共同により、確率論的フラクタル現象である自己相似過程、特にその中で大きな値をとる確率が急激に減らないフラクタル分布をもつとされる自己相似安定過程について、知られているすべてのことをまとめて発表すると共に、いくつかの新しい構成法を提案、更に確率論的標本関数の性質を調べた。又、それらの新しい確率モデルが時系列、地震デ-タなどの統計解析にどのくらい有効かを検討した。研究分担者の田中、田村は、更に河津(山口大)の協力を得て、そのようなフラクタル的確率過程によってその環境が確率的に変わるようなランダム・ウォ-クについて、その漸近挙動を研究し、ある種の統計力学の問題に対する接近を試みた。更に田中は単独でも、それらの研究の基礎になる特殊な確率過程のマルコフ性を証明した。研究分担者の渋谷は、物理学者川合(慶大)らの協力の下に、有限集合の確率分割の典型的なものである確率順列の巡回への分割の理論を使って、1次元非弾性体の衝突によって生じるクラスタ-の性質を説明することに成功した。柴田は、フラクタル次元の統計的推定に関して、モデル選択の立場からその方法の検討を行った。又仲田は、複素ディオファンタス近似にあらわれる複素領域について、その領域の境界のフラクタル次元の解析に関連して、自己相似性と平面のタイリング性の可否について部分的な結果を得、シュミットの連分数における方法論がタイリングが可能であるという予想の解決に有効かどうかを更に研究中である。
【研究代表者】