代数多様体内の強擬凸CR多様体のモジュライの研究
【研究分野】幾何学
【研究キーワード】
CR多様体 / モジュライ / 変形 / 安定性 / 孤立特異点 / Hodge構造 / 正規孤立特異点 / モ-ジュライ
【研究成果の概要】
実5次元以上の強擬凸CR多様体は正規孤立特異点の境界になり、更に、特異射影代数多様体に完備化できることが知られている。この関係に注目し、『実5次元以上の強擬凸CR多様体の情報の中から正規孤立特異点の反映として現れている情報だけを取りだし、そのモジュライを記述せよ』という問題が倉西正武氏により1970年代後半に提起された。本研究では、倉西氏の問題の持つ本来の意味付けを明確にし、その最終解決を行った。また、その過程で(問題解決に)必要な解析学を確立した。さらに、その中から典型的な場合に特異点の変形をCR構造を使ったアプローチで解析し、変形空間のより詳細な構造が分かることを示した。主要な結果は以下の通り。
(1)Vを原点のみに特異性を持つC^N内の(複素2次元以上の)正規特異多様体とし、Vを原点を中心とし十分小さな半径を持つC^N内の超球で切った切り口をMとする。M上のCR構造のstably embeddable変形の完備族を構成し、それがVの変形の完備族の境界構造になることを示した。
(2)実3次元強擬凸CR多様体上のtangential Cauchy-Riemann作用素に関しては、値域が閉空間であることとそのCR多様体が複素ユークリッド空間内に埋め込めることは同値であることが知られている。そのベクトル束版として、次のような結果を証明した。Mを複素曲面内の強擬凸領域の境界とし、EをM上の正則ベクトル束とする。このとき、Eが領域内部の正則ベクトル束に拡張可能ならE-値tangential Cauchy-Riemann作用素の値域は閉空間である。(この定理は、(1)の結果を得るために不可欠な解析学上の定理である。)
【研究代表者】