流体力学に現れる非線形偏微分方程式の調和解析の方法による研究
【研究分野】基礎解析学
【研究キーワード】
流体力学 / 調和解析学 / 函数空間論 / 偏微分方程式
【研究成果の概要】
ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク数理科学研究所およびカナダ・バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学に滞在し,2次元平面における消散項のある準地衡近似方程式の可解性の研究を行った.この方程式はラプラシアンを一般化した分数べきラプラシアンを含む平滑化効果を持つ非線形偏微分方程式である.本来,海洋学,気象学に現れるある数学モデルとして導出されたが,近年はNavier-Stokes方程式と数学的な構造が類似している方程式としても注目され,活発な研究が行われている.
昨年までの研究により,方程式の時間局所的な可解性を証明することができた.そこでこの研究に引き続き所謂,臨界消散指数の方程式(CQG)に対する解の減衰評価の研究を行った.CQGはスケール等の観点から3次元Navier-Stokes方程式に対応するものと考えられており,特に重要なモデルと考えられている.さてCQGにおいては非線形項の減衰が十分速いことから,L^1空間におけるPoisson核(の定数倍)の漸近安定性を比較的容易に証明することができる.今回我々は,これをより精密なノルムを持つ重みつきL^∞空間において考察し,その応用として解の空間減衰のオーダーに対するある特徴付けを得ることができた.より正確には,十分空間減衰の速い初期データから出発した解は(空間)無限遠方でPoisson核の定数倍に漸近することがわかった.ここにその定数は初期値の積分平均として与えられる.Poisson核が-3次のオーダーでしか減衰しないことに注意すると,解は一般には-3次より速いオーダーでは(空間)減衰しないものの,初期値の積分平均が0であるときに限り,解はそれより速いオーダーで減衰することがわかる.以上の研究によりCQG方程式の解の形状について新しい知見を得ることができた.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(スタートアップ)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】2,700千円 (直接経費: 2,700千円)