群同変性を用いた幾何学的発展方程式の解の安定性の研究
【研究分野】大域解析学
【研究キーワード】
幾何学的発展方程式 / ウィルモア汎関数 / ヘルフリッヒ変分問題 / 中心多様体 / 分岐理論 / 分岐方程式 / 勾配流 / 条件付勾配流 / 超曲面の発展方程式 / 安定性 / 正則性
【研究成果の概要】
本研究では、幾何学的発展方程式として、曲面や曲線の族に定義される汎関数に対する制約条件付勾配流を考察した。勾配流は、汎関数の最急傾斜の方向に汎関数値を減らすように対象を変形させるもので、汎関数の臨界点を求める一つの方法である。自然界に現れる曲線や曲面の形状は、何らかの意味で安定なものである。安定度を測るものが汎関数である。従って、勾配流の収束先は、エネルギー的に安定なものであると考えられる。
長澤と高坂は、汎関数として曲面に対するウィルモア汎関数に、曲面の面積と曲面が囲む領域の堆積を指定した制限付極値問題(ヘルフリッヒ変分問題)に対する勾配流をラグランジュの未定乗数は未知の定数として、構成した。球面の近傍の中心多様鯛について解析した。定常解については、球面からの分岐解についてモード2,4,6,8のものを求めた。分岐方程式を群同変性を用いて変形するが、群同変性分岐理論におけるequivariant branching lemmaは用いていない。従って、同lemmaでは得られない解の存在も示す事が出来た。また長澤は、曲面に対するヘルフリッヒ変分問題の勾配流も考察した。こちらは、特異極限によって制約条件を満たすような近似方程式を考え、近似パラメータに関する一様有界性を示し、更に、その特異極限の存在を証明した。
勾配流方程式は、偏微分方程式の分類でいえば、放物型になる事が多い。小池は、非線形放物型偏微分方程式やその定常問題に相当する非線形楕円型偏微分方程式に対する最大値原理や比較定理について研究し、論文として公表した。太田は、双曲型偏微分方程式で記述される発展方程式の解の安定性について研究し、論文として公表した。阪本は、CR構造を持つ多様体(CR多様体)の研究を行い、CR幾何に適したEinstein性を定義し、その性質を調べた。高坂は、境界条件を伴う表面拡散方程式の定常解の非線型安定性を調べ、論文に著した。掲載は決定済みである。幾何学の変分問題の解は、非線形方程式の弱解であるが、その正則性の有無を調べる事は重要である。立川は、不連続性を持つ積分汎関数に対する最小点の正則性について研究した。
【研究代表者】