海底泥火山活動を介した地下深部生命、炭素の海洋への拡散・循環モデルの構築
【研究キーワード】
海底泥火山 / 微生物 / 溶存態有機炭素 / 泥火山 / 炭素 / 深部流体
【研究成果の概要】
本研究は、種子島沖海底泥火山群の調査により採取された海水・堆積物試料中の炭素含有物質(メタン、有機物)の炭素安定同位体・放射性炭素同位体分析および微生物叢解析により、泥火山から放出される炭素物質・微生物の起源を明らかにする。また、これら炭素含有物質の海洋中の挙動(拡散、反応過程)を調べ、微生物活動との関連について定量的に把握することにより、泥火山活動を介した地圏-水圏-生命圏の相互作用を解き明かすことを目的とする。
令和2年度に溶存態有機物の濃度・安定・放射性炭素同位体比の測定を行う予定であったが、コロナ禍のために研究が進められなかったた。令和3年度は、TOC計を立ち上げ、海水中溶存態有機炭素濃度の精密測定のプロトコルの作成を行った。この結果、外洋の低濃度溶存態有機炭素濃度を繰り返し測定精度を1%以内におさえる分析手順を確立した。
その他、種子島沖海底泥火山で得られた間隙水、ガス、噴出堆積物の分析をすすめた。堆積物中のビトリナイトの反射率から堆積物の温度履歴を求めた。その結果、堆積物の経験温度は70℃程度であり、泥火山の流体に含まれる熱分解起源炭化水素ガスや、粘土鉱物の脱水由来の水を生成するには経験温度が低いことが明らかになった。このことは、水や炭化水素ガスは、噴出堆積物の起源層よりも深い深度から供給されていることを示唆しており、泥火山の噴出には、泥火山の噴出堆積物起源層への深部流体の注入とそれによる間隙水圧の上昇が寄与している可能性が高いと考えられる。
【研究代表者】