ゲノムダメージ自然史の解明
【研究キーワード】
放射線被ばく / ゲノムダメージ / 医療放射線 / バイオマーカー / ハイスループット解析技術
【研究成果の概要】
ハイスループットゲノムダメージ定量的解析法の確立では、PNA-FISH法を基盤とした染色体構造異常の新しい解析技術の開発に取り組んでいる。R3年度は、AIなどを用いた最新の画像解析技術の導入による高速自動染色体解析システムの開発を進めた。放射線誘発核内ドメインについても、現在より多数の検体についての解析に対応するため、これまでより高速かつ正確なgH2AXフォーカス、RAD51フォーカスのハイスループット解析技術の確立に取り組んでいる。多数の細胞について、特定のDNA領域の濃縮を行い、効率的に個々の細胞での変異や再構成を検出する新しいゲノムダメージ評価法の確立に、本研究の研究分担者である東京大学太田邦史教授と取り組んでいる。
新しいゲノムダメージバイオマーカーの開発では、放射線誘発核内ドメインの構造構築に関連する因子をプロテオミクスにより明らかにし、これらの因子について超解像顕微鏡や次世代シーケンサーを用いた解析により放射線誘発核内ドメイン内部の微細構造及び染色体DNAとの関連、染色体異常、DNA変異などを指標とした解析を行い、ゲノムダメージの新しいバイオマーカーとしての可能性を検討している。
ゲノムダメージ解析技術を用いた医療放射線被ばくの人体影響評価では、広島大学病院を受診し放射線診断、治療を受けた症例などについて、末梢血リンパ球を用いたゲノムダメージの経時的変動を検討する。R3年度は、CT検査などの放射線診断を受ける症例、肺がん、大腸癌などの放射線治療例、さらに比較的被ばく線量が高いとされている整形外科医や循環器内科医などの医療従事者についてゲノムダメージとその影響について定量的経時的解析を行うための臨床研究の申請を行った。さらに、現在確立しているPNA-FISH法を用いた染色体解析とgH2AXフォーカス解析によるゲノムダメージの定量的経時的評価を行っている。
【研究代表者】