大学演習林を核にした「ラージスケール生態系動態解析システム」構築のための企画調査
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
LTER / 環境動態 / 物質循環 / 生物多様性 / 水循環 / 長期大面積研究 / 大学演習林 / ネットワーク研究
【研究成果の概要】
森林生態学など時空間的にスケールの大きい現象を扱う分野では、動態解析の対象とする時間スケールが100年〜1000年単位まで拡大する傾向にある。また近年、「episodic(希な、突発的な)イベント」や「間接効果」といわれる反応の連鎖が生態系全体の動態に大きな影響を及ぼすケースが次々に発見されており、これらを解析するための長期大面積調査やネットワーク研究が調査手法の重要な部分を占めるようになっている。欧米やアジアの各国では、10年〜30年ほど前からLTER (Long-Term Ecological Research)といわれる(戦略的)研究システムが多数稼働しており、人材の集中配置と継続的な予算投入により長期、大面積の生態系動態解析を可能にしている。ところが、日本の研究システムの中にはこうしたラージスケールの動態解析を行う本格的システムは存在しなかった。そこで、この企画調査研究では、日本とその周辺地域にLTERの国際基準を満たす環境解析能力を持った研究システムを構築し、国際ネットワークにリンクさせるための具体的手法を集中的に議論した。
平成15年6月に、東京大学農学部附属科学の森教育研究センター愛知研究林にて第一回全体会議を開催し、大学演習林を母体として長期大規模研究ネットワークを構築するための組織JERN (Japan Ecosystem Research Network)を結成した。
JERNでは、日本のLTER実施プログラム「JaLTER」を開始し、日本生態学会・水文水資源学会・日本林学会などに呼びかけを行う一方で、電話による全体会議を5回開催し、実施のための詳細案を検討した。
また、LTER研究の先進国であるアメリカ(US-LTER)、中国(CERN)にコアメンバーおよび博士課程学生を派遣し、研修を行った。また、平成15年9月にシアトルで行われたLTER-All Scientist Meetingに出席し、日本のLTER研究の現状説明を行い、各国の進展状況について情報収集を行った。
平成15年12月および平成16年1月には、環境省全国生物多様性モニタリング1000と連携して、平成16年度より9カ所のコアサイトを稼働させることが決定し、JaLTERのコアサイトにおける基盤データ(ベースラインデータ)の一部に環境省が継続的予算措置を行うことが決定された。
関連論文を雑誌に2編掲載、平成16年度の日本林学会大会においてテーマ別セッションを開催し、LTER研究の啓蒙に努めるほか、平成16年度には日米合同LTERワークショップ、平成17年度にはLTERアジア太平洋地域シンポジウムを日本で開催することが決定し、準備を進めている。
【研究代表者】