海洋神話の比較研究
【研究分野】文化人類学(含民族学・民俗学)
【研究キーワード】
海 / 神 / 神話 / 妖怪 / 竜宮 / 女神 / 洪水 / 船 / ポルトガル神話 / 中国神話 / 挑戦神話 / 補陀落渡海 / 巨魚神話 / 海の怪物 / 海洋他界 / 太平洋 / デーモン / 海洋神話 / 幻の海 / セドナ / モンゴロイド / 太洋州 / ケルト / 龍宮 / インド洋 / 沖縄 / 瀬戸内海 / 地中海 / 住吉信仰 / 厳島 / 金毘羅信仰
【研究成果の概要】
世界の海洋神話をオセアニアから北海まで、瀬戸内海や黒海などの内海もふくめてひろく検討した。最初は沖縄で海の神話についてシンポジウムを行い、ついで竜宮神話、補陀落渡海神話、洪水神話、海の怪獣、海神と妖怪などについて海外の研究者の参加ももとめてシンポジウムをおこなった。最後に2005年1月には鳥取でイナバノシロウサギ神話を海洋神話の文脈で考えるシンポジウムを鳥取大学との共催でおこなった。因幡のシロウサギ伝承はインドネシアから揚子江流域、アムール川流域にまで分布する国際話形で、渡海の意味と機能が問題となっているものである。海洋神話の比較研究はこのように、いままで海の神話とは考えられてこなかったものも海の文化があることをあきらかにするという発見もあった。また、それまで犂や織機などの技術の伝播にともなう説話の分布を考えていて、技術文化のとぼしいオセアニアやアメリカ先住民、シベリア諸部族の伝承にあまり目をくばらなかったが、この4年間は、より基本的な技術としての航海や旅行、農耕、漁労などの「技術」の伝播を考えることによって、オセアニアやシベリアに重要な神話伝承の文化があることがわかった。竜宮や観音浄土などの信仰は世界に共通して存在し、それは洪水伝承の裏返しともなることもわかった。この成果は単行本として発表した「世界の洪水神話」(勉誠社)や、雑誌「アジア遊学」の特集号、あるいはフランスの学術雑誌IRISや、ソルボンヌ出版局の学術書「水の神話」などでも公表された。また丸山の「古代文学と琉球説話」はこの間のわれわれの海洋神話研究の集大成ともみなされるものであり、水野の「生と死の北欧神話」とともに成果としてほこりうるものである。あるいは、「神話・象徴・文学」2〜3においても全メンバーの研究論文が公表されているほか、シンポジウムは毎回、プロシーディングが刊行され、その総ページ数は1000ページをこえている。
【研究代表者】