化学イオン化質量分析法による硝酸測定器の開発
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
硝酸 / 窒素酸化物 / 吸着 / 二酸化窒素 / 質量分析 / 対流圏 / オゾン / 成層圏
【研究成果の概要】
質量分析測定で硝酸を高精度で計測するためには、硝酸の信頼性のある校正方法を確立する必要がある。このためにパーミエーションチューブから40Cの一定温度下で硝酸蒸気を発生させ、一定の希釈率で純空気と混合し、,既存の総窒素酸化物測定装置に導入し硝酸濃度を測定した。またパーミエーションチューブの重量変化から硝酸の発生量を推定した所、総窒素酸化物測定装置で測定した値と10%の差で一致した。次に質量分析計に試料大気を取り込む為の導入管、校正用の硝酸を混合させる為のシステムに硝酸を導入し、大気中での測定における硝酸の校正を模擬実験した。この結果、硝酸の導入及び遮断の際20分以上にわたり硝酸の信号が高いまま残った。これは硝酸が導入システムの壁に付着し、徐々に放出される為である。導入管を大幅に短くする等の工夫により多少の改善が見られた。
硝酸を除去するナイロンフィルターつきおよびナイロンフィルターなしの2つの総窒素酸化物同時測定により10EA0.1ppbvの硝酸濃度を決定した。硝酸を添加しない状態でもナイロンフィルターの有無により、2つの総窒素酸化物測定信号に0.1ppbv近い差が生じ、この差が0.1ppbv近く変動した。一方、既存の質量分析計を用いて、硝酸を含まない資料空気と、0.1EA10ppbvの硝酸を含む空気を交互に導入し、質量分析計の硝酸信号を測定した。硝酸を含まない資料空気を導入しても0.05-0.1ppbv程度の硝酸の質量スペクトルが検出された。これは、資料導入用の配管及び、質量分析計の表面に付着した硝酸の放出によるものと理解される。このバックグラウンド信号は、総窒素酸化物の実験と同様の時間変動をした。このように、高い時間分解能で、0.0lppbv程度の精度で硝酸を測定する際に、バックグラウンド信号をなるべく押さえ、しかも安定させることが非常に重要であることが分かった。
【研究代表者】