孔井内温度分布と年輪の解析によるカムチャッカ半島における気候変動の復元
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
カムチャッカ半島 / 気候変動復元 / 地球熱学 / 孔井内温度 / 地下水流動 / 安定同位体 / 標準年輪曲線 / 地球温暖化 / 気候変動 / 地下温度 / 年輪年代学 / 極東地域 / 古気候 / 地下温度勾配 / カムチャッカ
【研究成果の概要】
カムチャッカ半島において、地球熱学と年輪年代学という2つの独立した手法により、過去数百年間の気候変動を復元する研究を行った。
地球熱学の手法による研究としては、2000年?2002年に3回にわたり現地調査を行い、北緯53度付近の10本の掘削孔で孔内温度分布を繰り返し計測した。うち6本の孔井について過去の地表面温度変動を求めることができ、いずれの点でも最近50?100年の間に地表面温度が1?2K上昇したことが推定された。また、小型水温計を用いて3本の孔井内で長期温度計測を行った結果、孔内の水の小規模な対流や地下水の流れの季節変動を示唆するデータが得られた。さらに、温度計測を行った孔井内の地下水、及び周囲の河川水を採取し、安定同位体比・水質を測定した。その結果に基づいて、調査地域の地下水流動系の特性を明らかにし、地下水流動が孔内温度分布と気候変動推定に与える影響の評価を行った。
年輪年代学の手法によっては、2000年の予備調査と2001年の現地調査で半島中部のクロノツキー地域から採集したカラマツ55個体の試料から、同地域を代表する422年間の標準年輪曲線を構築した。気象観測データとの比較により、この年輪曲線は初夏気温に対し有意な相関を示すが、降水量には相関していないことが判明した。この結果に基づき西暦1624年までの初夏の気温を復元したところ、過去130年間の顕著な温暖化と全期間にわたる数十年周期の変動とが認められた。長期的な変動パターンは、孔内温度分布の解析結果と整合的である。
この他、韓国と琵琶湖岸の計4本の掘削孔においても温度分布を計測し、地表面温度変動の復元を行った。韓国では近傍での気温の実測データと整合的な結果が、琵琶湖岸では過去数千年の湖水の変動に対応すると思われる変動パターンが求められた。
【研究代表者】