日本河川の平均水質
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
環境解析 / 物質循環 / 水環境 / 地球化学
【研究成果の概要】
わが国では、河川水中の主要成分に関する学術的な研究例は少なく、陸水の研究は、生活・産業排水の影響を評価するための有害物質の挙動や、放射性廃棄物の処分を視野に入れた深部地下水の水質形成機構に重点がおかれている。また、行政が全国的に実施している河川の水質調査は、生活環境項目や健康項目に限定されており、水質を決定づける主要成分の挙動については、関心が払われていない。こうした現状を鑑みたとき、水環境の基盤情報たる溶存成分に関する知見の蓄積は、物質循環への地球化学的な興味のみならず、環境問題の解決に向けても有意義であると考えられる。そこで本研究では、広範囲に渡る河川水質の全体像を把握することを目的として、河川水試料の実地採取ならびに分析を実施することとした。2006・2007年度は、東北・北陸地方の約100河川において、春・秋の2回にわたって同一地点における水試料の採取と化学分析を行った。採取した水試料は速やかに研究拠点に持ち帰り、溶存成分の化学分析を行った。その結果、本研究により得られた分析値は、1950年代に測定された値に比べて、塩化物イオンと主要陽イオンのすべての濃度について10〜30%程度の上昇が見られた。また、人為的な影響を顕著に受ける硝酸イオンについては平均180%の上昇が観測された。これに対して、岩石風化といった天然由来の成分であるケイ素については、ほとんど変化が見られなかった。また、これら溶存成分の濃度を支配する非人為的作用について化学量論的な計算を行ったところ、比較的開発の進んでいない火山地域の河川についてはケイ酸塩鉱物の風化の有意な影響が見られたが、他の河川については炭酸塩鉱物の風化作用により支配されていることが判明した。
【研究代表者】