沿岸海洋堆積物における無機態窒素の非生物的有機化反応とその地球化学的意義
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
海洋科学 / 環境分析 / 窒素循環 / 核磁気共鳴 / 安定同位体 / 質量分析 / 有機態窒素 / 堆積物 / 沿岸海洋
【研究成果の概要】
平成22年度は昨年度に引き続き、(1)同位体トーレーサー法・核磁気共鳴法による堆積物有機態窒素計測法の確立、(2)然堆積物中の有機態窒素の化学構造解析を実施した。(1)については昨年度から試みている超音波抽出を併用した反復温アルカリ抽出による分画精製法にさらに改良を加えると共に、脂質由来化合物に結合した窒素を抽出するために有機溶媒を用いた抽出法も合わせて実施した。
(2)については、別のプロジェクトで採集された海草藻場ロングコア堆積物試料(竹原市沿岸の瀬戸内海、2m×5本)の一部を譲り受け、天然堆積物中での無機窒素化合物の有機化過程を調査する作業に着手した。そのための基礎資料として、堆積物中の粒径分布、有機炭素・窒素の含有量ならびにその安定同位体比の鉛直分布、堆積年代(C-14法による)のデータを取得した。一部試料に関してはバイオマーカーを用いた起源推定を試みている。有機炭素濃度と安定同位体比の分析結果から、主として陸域起源の外来性有機物が堆積物中有機物の主要な起源となっている干潟堆積物コアと、海草由来の現地性有機物が主成分となっている海草藻場コアとを明らかにすることができた。現在、このような有機炭素の起源の違いが堆積物中における窒素の存在形態と有機化プロセスにどのような影響を与えているかを検討しているところである。
核磁気共鳴法による構造解析については、15Nで標識された生物試料等を用いて測定条件の改良を行い、生物試料に関しては解析の目処が立った。しかし堆積物から抽出された天然有機物の測定に関してはなお検討の余地が残され、22年度末の段階では、本研究の中心的な目的である非生物学的プロセスによって天然堆積物中で生成する有機態窒素の特徴を完全に捉える段階までに至っていない。本研究により得られた多くの知見を基礎として、次年度以降も引き続き分析技術の改良に取り組む予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
梅澤 有 | 長崎大学 | 水産学部 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2009 - 2010
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)