森林の破壊と再生に伴う炭素シーケストレーション機能の評価
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
土壌呼吸 / 炭素循環 / 生態系純生産量 / 落葉広葉樹林 / ススキ草原 / 森林伐採 / 土壌呼吸速度 / 伐採直後 / 土壌呼吸測定システム / 空間変動
【研究成果の概要】
遷移段階の異なる森林生態系(落葉広葉樹林;伐採直後・50年生・110年生の森林さらに伐採後森林を再生せずススキ草原として利用している 4段階)を対象に、標準化された生態学的測定手法を用いてCO2の循環と収支を計測し、落葉広葉樹林のCO2吸収能を各遷移レベルで明らかにした。さらに、既に報告されている農業生態系(水田、畑地)と比較することにより、各生態系における年間の炭素固定量、土壌呼吸量および生態系純生産量(NEP)を評価した。年間の炭素固定量(NPP)は草原生態系(ススキ草原)で最も高く、50年生・110年生の落葉広葉樹林の3倍近い値を示した。また、土壌呼吸量も草原生態系が最も高く森林生態系の2倍以上であった。一方、伐採直後の落葉樹林の炭素固定能は最も低く、落葉樹林の1/3〜1/5を示したが、土壌呼吸量は落葉樹林の値と大きく違わなかった。さらに、水田生態系は比較的高い炭素固定能を持っているにもかかわらず、土壌呼吸量は最も低い値を示した。また、畑地生態系は耕種法の違い(一毛作と二毛作の違い)によって炭素の固定量が大きく異なることが示された。これらの値に基づき、各生態系の年間の生態系純生産量を比較すると、伐採直後の落葉樹林で-172gCm^<-2>、森林(50年生冷温帯落葉広葉樹林)で+11gCm^<-2>、草原(ススキ草原)で+16gCm^<-2>、水田で-21gCm^<-2>、畑地で-200〜-280gCm^<-2>の値を示し、生態系によって大きく異なることが明らかになった。このことは流域を構成している各生態系の利用方法や管理方法を変えることによって、系の炭素収支を制御できる可能性を示唆している。
【研究代表者】