バイオチャーが森林生態系の土壌圏と生態系炭素隔離機能に及ぼす中長期的影響の解明
【研究キーワード】
バイオチャー / 森林生態系 / 炭素循環 / 養分循環 / 生態系純生産量 / 炭素隔離機能 / 細根動態 / 栄養塩類
【研究成果の概要】
本研究の目的は野外におけるバイオチャー散布実験を通して、生態系の炭素隔離機能の中長期的変化と、その変化に関わる土壌圏の応答メカニズムを明らかにすることである。散布後6年目となる本年度も継続して、生態学的手法に基づく炭素循環プロセスの測定を実施した。昨年度までと同様に、植物成長量、リターフォール量の測定を行った。また、生態系からの炭素損失である土壌呼吸および従属栄養生物呼吸についても測定を継続した。従属栄養生物呼吸については、散布後4年目までのデータをまとめて著名な国際誌に投稿したが掲載には至らなかったため、現在補足データを加えるなどして改訂をすすめ、別の国際誌に投稿予定である。また、本年度は特に細根バイオマスおよび生産量について、それぞれコアサンプリング法およびルートメッシュ法を用いて推定した。しかし対照区とバイオチャー散布区との間で、樹木および林床ササの細根バイオマスや生産量に有意差は見られなかった。これは、散布からすでに6年が経過しており、バイオチャーによる影響が弱まっている可能性もあると考えられた。
一昨年度に新規に開始した小区画でのバイオチャー散布実験において、スキャナ法による細根動態解析を継続した。昨年度得られていたデータを再検討したところ、昨年度はスキャナ法に用いるアクリルボックス埋設による土壌攪乱の影響が残っていたと考えられた。したがって、細根動態解析には散布後1年が経過した今年度以降のデータを用いることが適切だと判断した。スキャナ画像の解析の結果、バイオチャーの散布によって細根生産率に顕著な変化は見られなかったが、バイオチャー散布区でやや生産率が低下する傾向が見られた。また、根画像において新規伸長した部分と枯死した部分を識別し、その面積変化をもとにターンオーバー率を算出したところ、バイオチャーを散布した区画ではターンオーバーがやや低下するという結果が見られた。
【研究代表者】