急激な水循環異変が懸念される東アジア巨大湖の生態・環境動態に関する緊急学術調査
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
大型湖沼 / 東アジア / フブスグル湖 / 撫仙湖 / バイカル湖 / 琵琶湖 / 微生物 / 溶存酸素 / 大型湖 / 東アジア地域 / 生態環境動態 / 陸水学 / 生態学 / 微生物群衆
【研究成果の概要】
本海外学術研究は、気候変化に伴い、急激な水循環異変が懸念される東アジアの大型湖沼において、湖沼学的な基礎調査を緊急に行い、水資源として重要な役割を果たすこれらの淡水湖沼の陸水学的特性を明らかにすることを目的とした。研究期間中、モンゴル・フブスグル湖および中国雲南省の撫仙湖において、それぞれ2回の現地調査を実施したほか、現地研究者の招聘やワークショップへの参加により、情報交換を行った。ロシア・バイカル湖については、研究代表者らが行ってきた先行研究の現地調査結果の解析と文献調査を進めた。以上の結果をわが国の琵琶湖において実施している陸水調査結果と比較、総合化することによって、当該地域の大型湖沼の環境保全・資源管理に向けての重要な基礎データを得ることができた。主な成果は以下のようにまとめられる。
1.フブスグル湖における水温構造と生物・化学パラメータの分布について調査を行った結果、深水層にクロロフィル極大があらわれる典型的な貧栄養型であることが明らかになった。
2.撫仙湖における冬季の調査の結果、湖盆最深地点(水深150m)では、わずかな水温躍層(温度差0.5度C)が40m付近に存在し、それにより、溶存酸素の深層部への供給が妨げられていることが明らかになった。これと対応して、化学成分(反応性溶存リン濃度、珪酸濃度)や微生物群集パラメータ(細菌相、微生物バイオマス)に顕著な鉛直勾配が観測された。
3.バイカル湖における微生物の鉛直分布を解析した結果、南湖盆中央部では、近年、概要域で報告されている鉛直プロファイルに近いパターンが見られるが、河川流入域(セレンガ河口域)では大きなアノマリーがみられ、活発な物質輸送が示唆された。
【研究代表者】