環境感受性が高い沿岸魚類の食生態分析に基づく環境汚染動態解析手法の開発
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
コノシロ / ダイオキシン / 宍道湖 / 安定同位体比 / 生殖巣
【研究成果の概要】
近年、東京湾などで内分泌攪乱作用が報告されているコノシロは、汽水湖沼である島根県の宍道湖では、大量死が発生して問題となっている。本研究では宍道湖に生息するコノシロについて、東端の高塩分水逆流口にあたる位置と西端の淡水流入口に近い位置で、定置網を用いてサンプルを採取した。また6月から夏季の長期に渡って斃死個体が観察されたので、それらも採取し、ダイオキシン濃度と体サイズ、成熟度、生息塩分を反映する複数の指標との関係を分析した。
従来、貧酸素によるとされていた宍道湖でのコノシロの大量死は、貧酸素でないときにも発生していた。定置網で漁獲したサンプルと斃死サンプルの体長・湿重量・生殖巣重量(GW)の測定から、大量死は生殖腺重量指数(GSI)の低下時期、即ち、産卵の終期と一致していた。これにより、大量死は産卵による体力低下に関係していると推測した。
ダイオキシン濃度と相関が高かった指標はGWとGSI(GW(g)/全重量(g)x10^2)であったが、GWとGSI同士の相関も高いので、この2つは同じ現象、すなわち、性的に成熟するにつれてダイオキシン濃度が高くなることを示すと解釈した。4月に東端で採取された個体、6月に浮遊死体として回収された個体、12月に東西両端で採取された個体を比較すると、サンプル数が少ないのでその差に有意性は得られなかったものの、6月に大量死した個体は、その他の個体よりダイオキシン濃度が若干高かった。ダイオキシン分析を行った個体以外について行った6月における大量死個体と生残個体とを比較すると、GSIに有意差がなかったことから、産卵期に向けて脂肪を蓄積したコノシロのうち、より多くダイオキシンを取り込んだ個体が、免疫力や浸透圧調節などの機能を低下させて死亡しやすくなり、大量死した可能性が考えられた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石飛 裕 | 島根県保健環境科学研究所 | 水環境科 | 科長 |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】2,900千円 (直接経費: 2,900千円)