東南アジアのバイオマス燃焼による対流圏オゾン生成・増大の研究
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
オゾン / バイオマス燃焼 / 東南アジア / エルニーニョ / 温室効果 / 対流圏化学 / エアロソル / 対流圏オゾン / 大気質
【研究成果の概要】
大気オゾンは,対流圏においてその強い酸化作用から直接生態系・食糧生産および人体の健康に悪影響を与えると考えられている。さらに重要な温室効果気体でもあり、その増大による気候変動への影響が無視できない。このように,対流圏オゾンは地球規模環境問題で鍵となる物質であるが,その生成・消失に関わる過程が複雑であり,時空間的に変動が大きいため理解はまだ不十分である。本研究は,東南アジア域,特にインドネシアおよびインドシナ半島でのバイオマス燃焼に着目し,それが対流圏オゾンの増大に与える影響について明らかにすることを目的に行われた。本研究は、主に(1)東南アジア〜東アジアでの航空機観測データの解析および(II)東南アジアでのオゾンゾンデ観測とそのデータ解析からなりたっている。(I)では、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究機構)などとの共同で行われたBIBLE航空機観測計画および米航空宇宙局のTRACE-P航空機観測計画で得られたデータを解析することにより、
○インドネシア域のバイオマス燃焼がインド洋から北オーストラリア・南熱帯太平洋域にかけての自由対流圏でのオゾンを50%程度と有意に増加させている。
○西〜中央太平洋域の広範囲の高度3〜5kmにおいて観測されたオゾンおよびその前駆気体量の増大層は、インドシナ域でのバイオマス燃焼に起因している。
ことを明らかにすることができた。また(II)では、インドシナ(タイ)での初めての系統的なオゾンゾンデ観測を実施することにより、
○3-5月にインドシナ域上空の対流圏全体にわたり、オゾン濃度が50〜80ppbvと増大している。その原因としては、高度3km以下ではインドシナでのバイオマス燃焼が主要なものであるが、高度4km以上ではその寄与は小さくなり、むしろインドなど南アジアから輸送された汚染空気中での光化学生成や長距離輸送も重要な働きをしていること。
が明らかになり、熱帯域でのオゾン収支を理解する上できわめて重要な知見が得られた。
【研究代表者】