大気粉塵中有害金属の超高感度計測による東アジアからの越境汚染の実態の解明
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
エアロゾル / 有害金属 / 超高感度計測 / LA / ICP-MS / 越境大気汚染 / 東アジア / 起源推定 / CMB法
【研究成果の概要】
近年、人間活動に伴う人為起源より大気中に放出される大気粉塵の増加が指摘されている。特に、中国においては深刻な環境問題の一つとなっている。粒子状物質は大気中に滞留し、地球の気候変動、酸性雨といったここ数年来大きな関心を呼んでいる地球環境問題に大なり小なり関与しており、その濃度や化学組成をモニタリングすることは、大気中の粒子状物質の発生源を明らかにし、さらにその挙動あるいは生活環境、気候などに及ぼす影響を把握する上で重要である。
そこで、中国北京市にある清華大学において、2001年3月より大気粉塵を採取し、大気粉塵試料の金属分析法としてレーザーアブレーション/誘導結合プラズマ質量分析(LA/ICP-MS)法を用いて大気粉塵試料の微量金属濃度を測定した。北京市における大気粉塵濃度(PM10)は約140μg/m^3であり、横浜市と比較して約4倍の高濃度であり、北京市の深刻な大気粉塵汚染の実態が明らかとなった。大気粉塵試料の微量金属濃度に関しては、ほとんどの金属成分が川崎市と比較して数倍の高濃度であり、特にAs, Al, Tiが高濃度であった。更に、北京市における大気粉塵の発生源について、CMB(Chemical Mass Balance)法を用いて推定を行った。その結果、北京市においては、土壌粒子、石炭燃焼粒子、二次粒子の大気濃度がそれぞれ、33.6μg/m^3、27.3μg/m^3、62.6μg/m^3と推定され、これらが大気粉塵の80%を占めることが判った。今後、北京市においては土壌、石炭燃焼の発生源対策が必要であると言える。
【研究代表者】