「家屋を取り巻く生活史調査」方法論の構築――住み継ぐ実践に向けた実証研究――
【研究キーワード】
生活史 / 家屋 / 住居 / 住み継ぎ / 住民自治 / 縮小社会 / 集合的記憶 / 地域社会
【研究成果の概要】
本研究は、空き家問題に代表される<住み継ぐこと>に関する課題について、縮小社会における選択的な住み継ぎという観点に立って行うものである。特に、家屋をめぐっては住居そのものだけでなく、当該家屋での生活に埋め込まれた地域性や共同性があり、それらは金銭的合意と共に<住み継ぐこと>に関して重要な位置にあると考えられる。
本研究では、個人生活史から地域性・共同性を描く方法論について、前年度の調査結果に基づいて議論を深めた。対象地における6件の聞きとり結果(20万字)の分析の結果、たとえば「高度経済成長期を経た生活の変化」といったテーマを設定して語りを考察すると、家屋をテーマにしたからこそ生活史と地域性・共同性を接続して分析可能な部分が見られることが確認できた。具体例として、燃料、水利用、家畜の3項目について確認したところ、いずれの項目についても家屋を超え、集落内・集落間関係といった広い空間における地域性・共同性の観察が可能であった。各項目は、それぞれ別個の調査をすることによっても語りを引き出せるが、家屋史というアプローチによって、生活全般に広く触れられる点が調査法としては重要である。
また、当初計画通りに、住民、行政、研究者、建築家、デザイナーの共同による家屋史調査を継続して実行している。同調査では、家屋所有者の価値観の変化、食生活の変化、家屋近隣の遊び場の変化といった話題が共通して家屋史調査に登場することが示唆されており、今後分析を進める。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)