契約法領域におけるコンピュータによる法的推論システムの開発研究
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
法規範 / 法解釈学 / 民法 / 民事訴訟法 / 契約 / 法的推論 / 論理学 / 知識工学 / コンピュータ / 知識ベース / PROLOG / エキスパートシステム / 法律エキスパートシステム / 人工知能
【研究成果の概要】
本研究は、法哲学、民法学および民事訴訟法学からなる法学と論理学、言語理論等の広い意味の哲学ならびに情報・知識工学の各分野の学際的共同研究である。それらの学問の観点と方法を用いて以下の点を解明した。
1.対象法規範文とメタ法規範文との論理的結合関係。2.契約に基づく法律関係の発生および喪失を確定するに至る民法の各関連法規範文の具体的詳細な論理構造。3.上記で分析された各法規範文と体系的関連と法律関係の全変動過程の統一的推論構造。4.民事訴訟上の適用法条確定と事実認定の推論の論理構造。5.主張・証明責任を中心とした実体法推論と訴訟法推論との論理的関係。6.法的推論システムを構築するに適した知識の表現方法。
以上の分析に基づいて、本研究は、契約法領域におけるコンピュータによる法的推論システムのプロトタイプのパイロットシステムを開発した。開発されたシステムの概要は次のとおりである。1.16ピットパソコンPC9801VM2上に人工知能言語PROLOG/KABAとその拡張ツールWINGを使用し、法的推論システムの新たなソフトウェアーを記述した。2.システムは、法的ルールベースとファクトベース、実体法推論エンジンと訴訟法推論エンジン、説明機能モジュールおよびインターフェースからなる。ルールベースには法規範文が複合的述語論理式の形で塔載され、実体法推論エンジンは「特別法は一般法に優先する」等のメタ知識を内含しルールの優先適用の制御機能を有する。インターフェースはQ&Aの対話手続きおよび入出力に際しての簡易自然言語変換機能を実現している。3.システムは、事例に契約法を適用した場合の法的帰結を推論する実体法推論と当事者の主張・立証に基づいて民事訴訟をシュミレートする訴訟ゲームとを行いうる。
また法的概念の格とフレームと文法の関係および階層関係、1階の述語論理による形式化の有効性が検証された。
【研究代表者】