マイクロマシンとしての筋フィラメント滑り機構の動的特性に関する総合的研究
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
筋収縮 / 筋フィラメント / アクトミオシン / Santan-clothing
【研究成果の概要】
平成5〜7年度にわたる本研究の主な研究成果は以下のように要約される。
1.Caged ATP光分解法によるアクチン・ミオシン間の単位滑り距離の測定:山田、杉らは単一グリセリン筋線維を、caged ATPのレーザー光分解により筋線維内のミオシン分子の数と等しいATP分子を放出させることにより活性化し、その結果起こる力学反応を解析した。この結果、単位滑り距離は等尺性条件下で約10nmであることが示された。
2.遺伝子工学的手法によるミオシンモータードメインの構造と機能の解明:須藤らは細胞性粘菌を材料としてミオシン重鎖のうち760個のアミノ酸残基からなるフラグメントを作製し、このフラグメントがアクチンフィラメントと反応して滑り力を発生しうることを示した。また須藤、杉らはミオシンのサブフラグメント2(S-2)部のアミノ酸残基の一部が欠失したミオシンを発現させ、S-2欠失ミオシンとアクチンフィラメント間の滑り速度が対照に比して減少することを示した。
3.単分子操作技法の発展:木下らは蛍光色素をATPあるいはアクチン分子に結合させ、個々の分子の動的挙動を蛍光顕微鏡下に観察記録する方法を開発した。また安藤らは原子力間顕微鏡と蛍光顕微鏡を組み合わせることにより、アクチン・ミオシン間の反応を単分子レベルで動的に記録解析する方法を開発した。
4.Caged Ca^<2+>光分解法による筋線維の化学機構エネルギー変換効率の測定:杉らは単一グリセリン筋線維をミオシン頭部と同数のATP分子存在下にcaged Ca^<2+>により活性化し、力学的反応を記録した。一方筋線維のATP消費量は収縮中の筋線維を急速に張力ゼロのレベルに弛めた後の張力の再上昇により測定した。実験結果は筋線維の化学機械エネルギー変換効率が個々のミオシン頭部レベルで大幅に変化することを示している。
【研究代表者】