重層化する不確実性へのレジリエンス:水産物サプライチェーン研究の課題と実践
【研究キーワード】
資本主義再考 / 技術革新 / スケーラビリティ / サプライチェーン / 不確定性 / 技術継承 / 外国人材 / 小規模水産物 / 偶発性 / リスク・マネージメント / 油脂間競争 / 外国人研修生 / 外国人実習生 / リスク / 消費 / seascape / wilderness / resilience / supply chain / capitalism / マルチサイテッド / レジームシフト / 不確実性 / 共同研究
【研究成果の概要】
研究代表者の赤嶺は、2021年6月中旬より7月末まで共同船舶株式会社が所有する捕鯨母船日新丸(8,145GT)に乗船し、同社が21NP-1Wと呼ぶ、三陸沖におけるニタリクジラ漁を参与観察する機会を得た。途中7月9日より7月16日まで捕鯨船第三勇新丸(742GT)に移動し、ニタリクジラ13頭の探鯨と捕獲・渡鯨に立ちあい、日新丸船団がおこなった探鯨から捕獲、渡鯨、解剖、パン立て、急冷、出荷にいたる全工程と、総勢110余名におよぶ船団の安全運行のために甲板部・機関部・司厨部らが作業する一部始終を学ぶことができた。「現場に立つ」ことがフィールドワークの基本であり、その意味で「捕鯨」という現場と「航海」という現場のふたつの現場を体験したことは、捕鯨史を再解釈するうえで有意義であった。2019年6月末に日本が国際捕鯨委員会を脱退し、同年7月より排他的経済水域内における捕鯨を再開して3年目の操業に参加したわけであったが、①2019年度に入社し、調査捕鯨を経験していない乗組員が3割弱に達すること、②製造部の新卒者の離職率が高く、さまざまな技術継承が問題となっていること、③冷凍ではない生鮮肉を仙台に水揚げし、あらたな鯨肉市場を開拓しようとしていることなど、共同船舶としても大きな変革期にあることがあきらかとなった。長津は宮城県三陸沿岸を中心にマグロ漁業の展開と外国人依存の歴史過程に関する聞き取り調査をおこなうとともに、同テーマについてインドネシア・中ジャワ州に住むインドネシア漁船員にオンラインでインタビューを実施した。大元は生産地と生産者の持続可能な水産物の適切な流通経路と規模の調査のために、あらたに島根県隠岐の島における学校給食での島産水産物の供給状況の調査を開始し、特にコロナ禍における小規模水産物生産者の需要の低下に際し、より緊密な関係性をもつ新規供給先の開拓が必要なことをあきらかにした。
【研究代表者】