欧州統合と対EU戦略の国際比較
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
EU / ASEAN / 地域主義 / 統合論 / 安全保障 / 市民社会 / NGO / 文化交流 / 地域統合論 / 国際文化交流 / 歴史認識 / ナショナリズム / 他者認識 / 東アジア / ニース条約 / 政治文化 / 外国人問題
【研究成果の概要】
本研究から導かれる主要テーゼは、以下の通り。
(1)ドイツ・シュレーダー政権の「ヨーロッパ政策」は、国家主権の移譲を憲法条約で規定することを求める「フィッシャー構想」(02年5月)が示すように、欧州統合の進展に極めて積極的である。ドイツは、欧州安保防衛政策の構築に積極的に貢献し、対米依存度の強い従来の欧州安全保障政策の自立性を高めようと努めている。
(2)冷戦後のアジア太平洋地域では、EUを柱に共通の安全保障政策をめざす欧州とは異なり、複数の安全保障体系が並存しつつ発展している。現在の日米安保同盟、「有志連合」など危機対応型同盟だけでなく、ASEAN地域フォーラム(ARF)のような国家間の信頼醸成・対話をめざす「多角的協調的安全保障」の枠組みづくり、また北朝鮮を包摂する形での危機管理をめざすOSCE型の安全保障体系づくりも試みられている。これらはASEANとEUの経験を参照しつつ、今なお国民国家の規範力が強いこの地域の特色を反映した安全保障ネットワークを形成している。
(3)アフリカには西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のようにEC・EUをモデルとした経済・政治統合をめざす動きがあるが、ここでは欧州統合の進展よりも、「市民社会」支援をめざすNGOのグローバルな展開の影響が大きい。第三世界の社会編成を踏まえずにグローバル・レヴェルで構築された規範が、「援助政策」を通して適用される場合、規範が歪められ、現地に混乱を来たすケースが多い。
(4)冷戦後の欧州各国では、第二次大戦とナチ・ドイツの暴力支配、コミュニズムの記憶をめぐる議論が、被害者への個人補償問題と連動して活発化しているが、これは東アジアの歴史問題に影響を与えている。EUは反ジェノサイドを標榜する「人権空間」として自己を定義しているが、その観点からの「人道的介入」が新たな犠牲を生むというジレンマを脱し切れていない。
【研究代表者】