森林コモンズの共同体論的・市民社会論的研究
【研究分野】林学
【研究キーワード】
コモンズ / 入会林野 / 市民社会 / 地域森林管理 / 循環・共生型社会 / 地方分権 / 住民・市民参加 / 森林ガバナンス / 里山 / C・P・R / 自然資源管理 / 近代化 / 地域生態系
【研究成果の概要】
伝統的・歴史的なコモンズを分解させて、近代的な所有や国民国家や市場経済が登場した。しかし、近代的所有・市場メカニズムによる「価格」や政府・公的セクターによる公共財の提供、ないしは「計画」によってのみでは、「持続可能な社会」のための自然環境や自然資源の管理がうまく運ばない。このことが、今日、地球規模で明確になってきた。このような歴史時代的状況のなかに、現代の多方面での「コモンズ論」の活況がある。
得られた知見を整理しておく。
(1)科学技術の「発展・成長」が地球システムの限界にぶつかって「順応」の時代を迎え、先進諸国の経済・生活が地域生態系にランディングしようとする際の「コモンズ」問題、他方での「テイク・オフ」をめざす発展途上国・地域での「コモンズ」問題。これら双方を、自然環境および資源の所有・利用と管理の在り方をめぐる共通の場に乗せて認識を深めなければならない。そして、重なる境界領域を見いだし、もっと「重なりとしてのコモンズ」論を深化させて行く必要がある。
(2)日本で厳密な規定を与えられる森林コモンズは入会林野であるが、近代化(テイク・オフ)の過程でそれは私的所有と公的セクターによる公共財に分解してきた。現在多くの日本の森林は、近代的な私的所有権を成立させ、その枠と権利を残したなかで、中身としての森林の利用・保全が困難な事態にある。「公」と「私」の境界領域を可能な限りダブらせる「コモンズ」政策が必要となっている。
(3)コモンズとは、あくまでも「共同体」のもとで意味づけを与えられたところの、一つの空間的なcommon propertyであり、それが生きる場所は風土としての生活世界にある。市民社会に足場をもち、かつ市民社会を超えるところの「共同体」を構想し、「コモンズとガバナンス」をデザインすることが要請されている。
【研究代表者】