個人レベルのモデルを用いた顧客関係管理(CRM)のための意思決定支援システム
【研究分野】商学
【研究キーワード】
ベイズ統計 / マーケティング / 異質性 / 顧客 / CRM
【研究成果の概要】
CRMで重要な概念である顧客の生涯価値を計算するには、顧客の離脱率または維持率を把握することが必要である。しかし離脱する顧客は単に購買を止めるだけで、年会費などの支払い義務がないような"契約に基づかない状況"では、わざわざ離脱を申告することは稀だ。通常このような場合、企業は独自の経験則に基づいて、例えば顧客が3ヶ月購買しなければ離脱したと判断したりする。実務家の間でよく使われるRFM分析では、(RECENCY=3ヶ月)のようなアドホックで一律なルールが基本になっているが、ここには2つの大きな問題がある。第1に、このルールが主観的なことである。なぜ2ヶ月や4ヶ月でなく、3ヶ月なのだろうか?2つ目の問題は、マーケティングの基本的概念である顧客の異質性を無視していることである。同じ3ヶ月のRECENCYでも、購買間隔が長い顧客は離脱の心配が無いが、購買間隔が短い顧客は離脱している可能性が高いであろう。つまり離脱率の推測に顧客の異質性に配慮する必要があるだろう。この問題は、Schmittlein et al.(1987)らがPareto/NBDモデルを使った"counting your customers"フレームワークによって20年ほど前に研究したが、今日のマーケティングでは個々の顧客に焦点をあてた、よりミクロレベルの分析が求められている。
本研究では、Pareto/NBDモデルにおけるロバストな消費者行動の仮定(ボアソン購買プロセスとメモリレス離脱プロセス)は残しつつ、個人ごとにパラメータを推定することによって顧客の異質性をモデル化することを提案する。手法としては階層ベイズモデルをMCMC法によって推定する。このモデルでは、Pareto/NBDモデルと違って2つの行動プロセルの独立性を仮定する必要がなく、かつ顧客ごとの生存期間や維持率など、従来得られなかったCRMに有用な指標が求められる。この研究では顧客の購買予測をベンチマークであるPareto/NBDモデルと比較する。スキャンパネルデータを使ったモデルの拡張では、RFデータに顧客の購買行動データやデモグラフィック情報を加えることによって、ロイヤル顧客はより多くの金額を使うのか、またはより多くの利益を生むのか、などのCRMに重要な示唆が得られることを示した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】1,600千円 (直接経費: 1,600千円)