新教育運動期における自然保護運動の昂揚と環境教育の起源に関する比較史的研究
【研究キーワード】
新教育 / 自然保護 / 環境教育 / 自然学習 / 初等理科教育 / 都市計画 / 改革教育 / 進歩主義教育 / エコロジー
【研究成果の概要】
アメリカ、ドイツ、イギリスの19世紀末から20世紀前半にかけての自然保護運動の展開を、4人の担当者がそれぞれたしかめた。アメリカについては、ソーローやエマソンの超絶主義の思想が、自然への畏敬や自然を愛する心情を育てることを含んでいた。その影響を強く受けて、コーネル大学のベイリやコムストックが中心となって、自然学習や初等理科の授業を開発していた。彼らは、自然をよく観察することと同時に、自然への畏敬の念をもつことを重視しており、自然保護の思想と強い関連をもっていた。ところが、1920年代になると、自然学習運動が衰退し、科学教育が普及していった。このとき、自然保護の思想よりも、人間が自然を利用しようとする動きが強まったことが推測される。まだ実証はできていないが、この時期の自然保護運動を、現代の環境教育の直接的起源とみることには無理があり、その後の紆余曲折を解明することが課題になりそうである。
イギリスの自然保護運動も、自然学習論の展開を中心にたどることができる。大都市化や工業化が進んだために、その弊害を自覚していたミドルクラスの人々は、郊外に住宅を求め、園芸書を学んで、自然のとのかかわりを重視するようになっていた。彼らが、環境学習や地域学習を推進したのである。イギリスでは、多様な意図が混在していた自然学習であったが、それが後の環境教育に発展したと思われる。これを確かめることは今後の課題である。
ドイツについては、エコロジー思想の起源を探ったものの、教育とのつながりを示すものを確認することができなかった。しかし、自然と人間が一体化した共同体を形成しようとした教育実践はいくつかあり、それらについて、あらためて検討を進めていく予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
渡邊 隆信 | 神戸大学 | 人間発達環境学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
山崎 洋子 | 武庫川女子大学 | 言語文化研究所 | 嘱託研究員 | (Kakenデータベース) |
山名 淳 | 東京大学 | 大学院情報学環・学際情報学府 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)