消化管の全身エネルギー代謝調節機構の解析による食品機能の新側面の解明
【研究分野】食生活学
【研究キーワード】
エネルギー代謝 / 脳腸相関 / 栄養学 / 食品 / 脳・神経 / 遺伝子 / マイクロアレイ
【研究成果の概要】
転写因子Skn-1a欠損(S-KO)マウスは、野生型(WT)マウスに比較して、摂食量(通常食および高脂肪食)に変化がないにも関わらず、体脂肪率・体重増加率の優位な低下、エネルギー消費量の優位な増加が観察された。S-KOマウスは消化管の化学受容細胞(甘・苦・旨味受容細胞、刷子細胞)が消失している。これまでに、刷子細胞に発現するX-GPCRを欠失した(X-KO)マウスにおいてもWTマウスに較べ摂食量に変化はないが、優位な体重増加の低下が観察された。本研究では、化学受容細胞とくに刷子細胞を起点とする食シグナルのエネルギー代謝制御の解析を行なった。
これまでに、摂食/絶食条件下あるいは通常食/高脂肪食摂取のいずれの場合においても、S-KOマウス視床下部室傍核(PVN)の恒常的c-fos抗体シグナルを観察した。本年度は、S-KOマウスのPVN以外の脳神経部位の活性化を確認するために脳組織全体のイメージング質量分析(I-MS)を行った。S-KOマウスとWTマウスのI-MSパターンは、大脳皮質、延髄孤束核、視床、視床下部において顕著な相違が見られた。そこで筆者らは、PVNに焦点を当てc-fosシグナルに連動して活性化する神経核の特定とそこに含まれる代謝物のI-MS解析が有効だと結論した。
エネルギー代謝調節における刷子細胞の関与を調べるために、X-KOマウスのPVNにおけるc-fosシグナルを解析した。絶食/摂食条件下においてc-fosシグナルの活性化を認めた。S-KOマウスにおけるc-fosシグナル強度よりは弱いが、刷子細胞を起点とするエネルギー代謝調節が生じる可能性が示された。
以上の結果から、消化管の化学受容細胞を介した摂食依存的なエネルギー代謝亢進はPVNの活性化によることが明らかになった。今後、その分子実態をI-MS分析により解析することが期待される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
安岡 顕人 | 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 | 未病改善食品評価法開発プロジェクト | 研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2020-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)