トレランス誘導型樹状細胞を用いた免疫寛容誘導の検討
【研究分野】外科学一般
【研究キーワード】
HLA / peptide / regulatory T cell / CD4+CD25+ / thymus / 免疫寛容 / 臓器移植 / 骨髄移植 / 樹状細胞 / ビタミンD / マウス
【研究成果の概要】
ドナー由来の抗原をレシピエントに投与して免疫寛容を誘導する方法は、動物実験でさまざまな手段が試みられているが、臨床的に確立するまでに至っていない。我々はこれまで、2種類のHLAトランスジェニックマウス(バックグラウンドは同じC3H/HeJで、HLA-B51を移入したトランスジェニックマウスとHLA-B35を移入したトランスジェニックマウス)を用いた心移植実験で、ドナーのHLA-B35分子由来ペプチドを胸線内に投与することにより、免疫寛容を誘導することに成功している。
一方、自己免疫疾患におけるCD4+CD25+T細胞(regulatory T細胞)の重要性が知られている。このT細胞は生体の過剰な免疫反応を調節する機能を有しており、抑制機能がうまく働かない場合に自己免疫疾患が発症するといわれている。CD4+CD25+T細胞に特異的に発現している遺伝子でFoxp3という転写因子があり、この遺伝子をCD4+CD25-T細胞に導入すると抑制作用を示すことが知られている。また、Foxp3はCD4+CD25+T細胞以外には機能していないため、よいマーカーとなる。
前記の免疫寛容の機序を解明する目的でCD4+CD25+T細胞に着目し、実験を進めた結果、次のことが判明した。すなわち、ドナーのHLA-B35分子由来ペプチドを胸線内に投与後4週間経過したマウスの脾細胞を採取し、CD4+CD25+T細胞を分離生成して、無処置のレシピエントに移入すると、その2週間後異所性心移植をした心臓は永久生着することが判明した。さらに、ドナーとしてthird partyの心臓を移植しても生着延長効果はみられなかった。つまり、ドナーのHLA分子由来ペプチドを胸線内に投与するだけで、免疫寛容を誘導するCD4+CD25+T細胞(regulatory T細胞)が末梢に出現し、これを移入することで、ドナー特異的免疫寛容が誘導できるのである。
さらに、移植心の浸潤細胞におけるFoxp3の発現をmRNAレベルで検討すると、寛容が誘導された心臓にはFoxp3が高発現していることがわかった。すなわち、ペプチド胸腺内投与により誘導されたCD4+CD25+T細胞が移植心に集積して、免疫寛容誘導を引き起こしている可能性が高いと思われる。
【研究代表者】