前近代の専門家を取り巻く「環境」に関する比較国制史的基礎研究
【研究キーワード】
専門家 / 軍人 / 西洋 / ドイツ / 近世 / 分国法 / 法史学 / 前近代 / 国制史 / 法律家 / コミュニケーション / 弁論家 / 公証人 / 裁判官 / 室町幕府 / 長崎奉行所 / 中国
【研究成果の概要】
今年度は本来、研究計画の最終年度であり、昨年度から延期した国際研究集会を開催して研究課題の完成をはかる予定であったが、新型コロナウィルス感染状況が昨秋以来いわゆるオミクロン型の感染拡大によって悪化したため、国際研究集会を来年度に再延期することを余儀なくされた。そのため今年度の作業としては、いくつかの個別テーマについていちおうのまとめを行うとともに、今後の研究をもにらんで発展的・展望的な考察を試みることが中心となった。
具体的には、西洋近世の専門家について、近世プロイセンの軍人に関して、連隊長人事とプロイセン外の帝国諸侯家門出身者の起用との関係が論じられ、軍事専門的論理と貴族的価値や名誉観念との緊張関係が具体的に明らかにされた。また、法専門家としての近世ドイツの大学法学部スタッフが、訴訟記録送付と鑑定意見の制度を通じて裁判実務といかに関わり、彼らの専門知が裁判権者や訴訟当事者にとってどのような意味を持ったかが、魔女裁判の事案を例に論じられた。日本中世については、いわゆる戦国分国法の中でも注目すべき法史料である伊達氏の『塵芥集』に関して、その成立過程と構成を検討することを通じて、そこにおける専門知の意義が考察された。
発展的・展望的な考察としては、古代ローマの法学者たちの活動とその成果を現代のローマ法学者たちがどのような構成で整理し表現しているかが、各国のローマ法教科書を素材に検討され、歴史上の専門知を現代の専門家がどのように認識しているかが論じられた。また近代日本における法史学研究のパイオニアであった宮崎道三郎の旧蔵和書洋書の分析を通じて、法史学者という専門家の出現を、西洋特にドイツの学問環境や、明治以前日本の学問伝統の文脈などの中に位置づけることが試みられた。
【研究代表者】