アンコール遺跡群における石材劣化の新展開とその集学的研究
【研究分野】文化財科学・博物館学
【研究キーワード】
保存科学 / 浮き彫り / バイヨン寺院 / 環境評価 / 微生物評価 / 石造文化財 / モニタリング / 砂岩浮き彫り / 劣化評価 / モニタリング技術 / 遺跡整備
【研究成果の概要】
5月に全体会議を実施し、研究体制の確認を行った。海外調査は4月、7月、12月、1月に実施した。各領域について次のような調査・研究を行った。
1.保存状態調査研究:本研究の主要対象遺跡であるバイヨン寺院は近年の観光客増加の影響で緊急処置が必要な状況にあるため、現地遺跡管理機構のアプサラ機構およびユネスコと今後の対策方針に関して意見交換を行った。また危険箇所記録調査を行った。
2.劣化メカニズム調査研究:大気の影響評価のため、 エアロゾル観測を行った結果、乾季のPM2.5濃度は観測期間の70%以上で日本の環境基準を超えたことを明らかにした。バイヨン等4遺跡にて析出塩類の一つである石膏に着目し、その起源物質を明らかにするために、ストロンチウムとイオウ同位体の分析を行った。結果、コウモリの排せつ物が塩類の主たる起源であることを明らかにした。微生物作用を明らかにするため、コウモリ由来のアンモニア酸化による硝酸イオンの蓄積を、遺伝子解析及び15Nの安定同位体の取込みについて調べ、アーキアを中心とするアンモニア酸化微生物の寄与を明らかにした。石材劣化部位より分離した糸状菌について、砂岩テストピースを用いた1年間に亘る培養試験を行い、砂岩の表面形状の変化に及ぼす影響を調べた。
3.整備影響調査研究:バイヨン塔42回廊施工試験において、屋根目地詰め材の効果を確認するため漏水試験を実施し、壁面への漏水防止効果を確認した。その後試験回廊壁面への保存処理薬剤の試験を開始した。2007年に曝露開始した砂岩保存処理薬剤の効果を確認した。また浮彫の経年変化を観測するため3次元計測を行い、移動型3次元レーザ計測システムの高精度化・高解像度化手法を開発した。
その他:2019年12月JSA/JASA25周年記念シンポジウム、2019年9-10月に橿原考古学研究所において成果展示を行った。
【研究代表者】