法整備支援を通じた制度改革による国家のガバナンス向上に関する開発法学的研究
【研究分野】ガバナンス
【研究キーワード】
開発 / 制度改革 / 良い統治 / ガバナンス / 良い政府 / 開発法学 / 法整備支援 / グローバリゼーション / 法の支配 / 非形式的制度 / メタ・ルール / 発展
【研究成果の概要】
本研究では,(1)国家のガバナンスのあり方が,市場・企業のガバナンスおよび市民社会のガバナンスの問題と密接に関連していること,(2)国家ガバナンスを向上させるためには,法整備を通じた制度改革(institutional reform)が不可欠であること,(3)そのような制度改革を実現するためには,市場取引,企業活動および市民運動がグローバルなレベルで展開される現代社会においては,法整備のための国際協力(法整備支援ないし法整備協力)が不可欠であること,(4)そうした法整備支援活動を通じて行われる被支援国のガバナンス改革の経験は,支援国自体のガバナンス改革にとっても有益なフィードバックをもたらすこと,そして,(5)そのような形での法整備協力の積み重ねが,国際社会における秩序形成の当面の目標とされるべきグローバル・ガバナンスの構築を可能にするための最も着実な方法であることを明らかにした。そのうえで,本研究では,(6)国際機関,外国政府および日本政府が,被援助国のガバナンス向上のために実施してきた様々な法整備支援プロジェクトの方法や内容を検証した。その結果,それらは,(1)被支援国の立法改革,(2)司法制度を構成する組織および公務員(裁判官,検察官,弁護士など)の能力養成,および(3)市民社会の育成に分類することができること,その中では(1),(2)が比較的多いことが明らかになった。しかし,そこでは,(a)法整備支援の一貫性・体系性・計画性の欠如,(b)ドナー間の情報交換・協力体制の欠如,(c)法整備支援に携わる人材確保の困難さ,(d)プロジェクト期間の限定性と個別フェーズにおける評価の困難さ,(e)支援国と被支援国との考え方のずれ,(f)言語ギャップ,(g)被支援国の依存体質の助長といった問題点が存在することも明らかになった。しかしながら,(7)これらの課題は,今後,法制度改革を手段とする開発理論としての開発法学を構築するために格好の素材を提供している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)