行動制御の性差を生み出す神経メカニズムの解明
【研究キーワード】
性差 / 精子 / 自発運動量 / C. elegans / ドーパミン / 交尾 / 行動 / 神経伝達物質 / 性行動 / 受容体 / カルシウム / 自発運動 / 行動状態
【研究成果の概要】
行動の性差は動物が効率的に交尾し繁殖するために重要であるが、性特異的な行動制御の神経メカニズムについては不明な点が多い。本研究は、行動制御の性差とその神経基盤を明らかにすることを目的とする。線虫C. elegansには精子と卵子両方を作る雌雄同体とオスが存在するが、オスは雌雄同体よりも自発的な運動量が高い。自家受精できるために交配相手を探す必要のない雌雄同体は餌から離れずじっとしており、子孫を残すために交配相手を見つける必要のあるオスは餌のある領域の内外を探索するという合理的な性差がこの自発運動量の違いにより生まれる。精子の形成に異常のある変異体を調べた結果、精子を作ることのできない雌雄同体(実質的なメス)は、通常の雌雄同体よりも運動量が増加していることが明らかとなった。精子の作れない変異体とドーパミン欠損変異体の二重変異体を作製し、精子による自発運動量制御にドーパミンが関与するかを調べた。二重変異体はドーパミン欠損変異体と自発運動量に違いがなかった。この結果から、精子による運動量制御にはドーパミンが必要であることが示唆された。
オスは雌雄同体に触れると、尾部を触れたまま雌雄同体の周りを回り、生殖器を探す。この際、雌雄同体が頻繁にオスから逃げることが報告されている。ビデオ撮影と画像解析により、オスが触れた時の雌雄同体の速度変化を測定する系を作製し、野生型と精子形成異常変異体のオス忌避行動を解析した。その結果、野生型はオスが接触すると速度を上昇させるが、精子異常変異体では速度が低下することを明らかにした。このことから、体内の精子がオスからの忌避行動に関与することを明らかにした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
坪井 貴司 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)