肥満のリスクファクターとしての脂質酸化能および身体活動量に及ぼす運動の影響
【研究分野】応用健康科学
【研究キーワード】
身体活動 / エネルギー代謝 / 運動 / スポーツ栄養 / 健康増進
【研究成果の概要】
研究1:トレーニング実施者における脂質酸化能および身体活動量(横断的検討)
長期にわたって高強度のレジスタンストレーニングを実施してきたボディビルダーとパワーリフター、および対照群として一般健常者を対象として、脂質酸化能、基礎代謝量、二重標識水法による日常生活のエネルギー消費量などを測定した。レジスタンストレーニング実施者においては、基礎代謝量のみならず、日常生活の総エネルギー消費量が非常に大きく、身体活動レベルも日本人の標準的な値を越えていた。一方、二重標識水法の結果に基づいて直前から食事をコントロールした上で、ヒューマンカロリメーターで測定を実施したところ、脂質酸化能の指標であるRQ(呼吸商)に有意差はみられなかった。
研究2:トレーニングの継続による脂質酸化能および身体活動量への影響(介入実験)
レジスタンストレーニングが脂質酸化能および日常生活における身体活動に与える影響を検討するために、運動習慣のない男子大学生を対象として、約3ケ月間にわたるトレーニングを実施した。測定は、トレーニング期間の直前および直後の計2回で、日常生活における身体活動量は二重標識水法・基礎代謝量と3次元加速度計を用いて評価した。脂質酸化能の指標であるRQや睡眠時代謝量などは、入室前の食事をトレーニング前後で同じになるようにした上で、ヒューマンカロリメーターを用いて測定した。1日当たりのRQの変化について、対照群と比較して有意差はみられなかった。睡眠時代謝量や24時間のエネルギー消費量についても、変化量には群間差がみられなかった。
以上のように、厳密な実験計画のもとで実施した横断的検討および介入実験のいずれからも、脂質酸化量に対するレジスタンストレーニングの影響はみられなかった。ただし、個人差は大きいものの、職業などの影響により、日常生活における身体活動量の大きくなる傾向がみられた。
【研究代表者】
田中 茂穂 独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム エネルギー代謝 プロジェクトリーダー
(Kakenデータベース)